雨の日をプラスに伝えるガイドのポイント6選

通訳ガイドスキルアップ

雨の日が多い季節になってきました。

ガイドにとって雨の日のガイディングは少なからず難しさを感じるのではないでしょうか。せっかく遠い国から日本へ旅行に来てくれたのに雨が降ってしまうなんて可哀そう…と、おもてなし心溢れる優しいガイドさんはゲストたちに同情もするでしょう。でも、できることなら「雨でもじゅうぶん日本を楽しめた」って思ってもらいたいですよね。ガイドの配慮と伝え方ひとつでそれは可能なはず!

まずは常日頃から、雨が降った時に「うわっ、また雨だ。いやだなぁ〜」などと反応せず、「雨には雨のよさがあるよなぁ」って思うよう意識していれば、きっと雨の日ならではの楽しい過ごし方のアイデアがどんどん浮かんでくるでしょう。

日本の年間降雨量は世界平均の約2倍だとか。そんな雨の多い国。雨の日だって楽しまないともったいないですよね!今回は「日本ならでは」の雨をありがたく感じれることを6つご紹介いたします。

【ガイドライター】
齋藤 一美(さいとう かずみ)
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2016年に英語全国通訳案内士資格取得。通訳ガイド派遣会社でのコーディネーター職を経てフリーランスの通訳ガイドに。コロナ禍の現在は前職の介護福祉士として高齢者ケアの仕事に従事中。グーグルマップを見ながら妄想旅のプランをあれこれ練ってるときが至福の時間。

雨の日はお得がいっぱい

雨の日は外出する人がぐーんと減るのでふだんよりお店が空いています。なのでいつも行列が長い人気のラーメン屋さんも美味しいレストランも空いてる可能性大です。「ふだんはこんなに早く席へ案内してもらえないのに、雨であなたはラッキーだったね!」と伝えれば、ゲストたちもきっと得した気分になるでしょう。

またスーパーやデパート、商店街、レストラン、レジャー施設‥など、いろんな場所で雨の日は割引やポイントアップ、特別メニューなど、さまざまなサービスを提供してくれている場合があるので、可能な限りリサーチをしておけば、ゲストが喜びそうなお得な情報をシェアしてあげることができます。「雨のおかげでお得な経験がたくさんできた」と思ってもらえること間違いなしです!

梅雨空にこそ見るべき美しい風景

どんよりとした雨の日がつづく梅雨の時期にあじさいは私たちの目と心を和ませてくれます。また涼しげな青や紫の色が日本の風景によく映えます。それも雨の日こそ、しっとり艶やか美しさにより一層磨きがかかりますよね。梅雨空の日は公園やお寺などあじさいの名所へお連れし、最高に美しい紫陽花を堪能してもらいましょう。そしてもう一つ、雨の日にこそ見るべき自然のものといえば「苔」です!梅雨の時期は苔の見頃です。少し前には「苔ガール」なんて言葉も耳にしましたが、近年苔の人気が高まっています。青空の下に広がる芝生の清々しい美しさとはまた違う、苔の神秘的な美しさや健気さ、愛おしさなど、DNAに「侘び寂び」の美意識が刻み込まれている日本人には感じずにはいられませんよね。

ひと昔前までは海外の人には苔のよさが理解できないと言われていましたが、最近は海外で禅ブームということもあり、京都や鎌倉などの禅寺に多くの外国人旅行者が訪れ、苔の美しい庭園に魅了される人も増えています。雨の日に苔スポットへ案内したら、日本人の美意識を感じてもらえる良い機会になるかもしれませんね。ちなみに都内だと等々力渓谷は苔スポットとしても知られています。

梅雨は和食を支えてる!

世界中に発酵食品はありますが、味噌や醤油などの調味料から鰹節、漬物、納豆、日本酒など、日本は特に発酵食品の種類が多いですよね。そんな日本の発酵食品は健康食として最近は海外でも注目されています。そして日本の発酵食品に欠かすことができないものと言ったら「麹菌」です。「麹菌」は「二ホンコウジカビ」というカビの一種で、食べ物を腐敗させるカビとは違う、世界でも珍しい日本にしかないカビです。2006年には「国菌」として認定されています。麹菌は高温多湿な梅雨の時期にもっとも元気になります。日本にもし梅雨がなかったら麹菌は生き続けられてなかったかもしれませんよね。雨の日に食材の宝庫、築地や錦市場などでガイドする時はアピールするチャンスです!「日本は雨が多い高温多湿の気候のおかげで素晴らしい食文化が栄えた」と大いに伝えましょう!

おいしいお米作りに梅雨は不可欠!

日本のお米は本当に美味しいですよね。海外でもおにぎりの人気が高まっています。そんな美味しいお米作りにとって梅雨の時期は、田植え後の苗の成長を促すために大量の水が必要になる大切な時期にあたります。じゃんじゃん降る雨はまさに「恵みの雨」なんですね。梅雨の時期に晴天が続くと単純にラッキーと浅はかにも思ってましたが、水不足になって干上がった水田をちょっとイメージしてみると全然ラッキーなんかじゃない!ということに気づかされます。雨が続いて鬱々するなぁ〜と思った時は、田んぼに思いをはせて、雨で苗が潤って元気に育っているところを想像してみれば「雨」へのありがたみの気持ちが自然とわいてくるのではないでしょうか。

ゲストにも雨をきっかけに、古代から日本人にとってお米が如何に重要だったかなど、日本人とお米のあれこれを話してみると興味深く聞いてもらえるかもしれませんね。また、水田を見たことがないゲストに棚田などへお連れするのも喜ばれるかもしれません。ちなみに東京から一番近い棚田は千葉県鴨川市にある「大山千枚田」で、日本棚田百選にも選ばれている美しい原風景が広がっています。

雨のおかげで磨かれた日本の建築技術や知恵

雨が多く高温多湿な気候の日本では古来より家屋を雨から守る工夫「雨仕舞い」がもっとも重要な課題のひとつでした。昔の家屋にみられる深い軒や急勾配の屋根、縁側、雨戸などは先人たちによる雨仕舞いの知恵の賜物です。また固定の壁をできるだけつくらず障子やふすまなど移動や取り外し可能な建具をもちいることで、家の中の通気をよくして湿気がこもらないよう工夫もしていました。そして現代建築でも用いられている雨仕舞いのひとつが雨樋です。建物を劣化させないために必要ながらも景観を悪くもするため、より目立たなくとか、より格好よくとか建築家の人たちはいろいろとデザインを工夫しているようです。そんな雨樋は、もともとは貴重な雨水を飲料水や生活用水として利用するための「上水道」が役割だったようです。現在のような雨水の排水が役割の現存する日本最古の雨樋は東大寺三月堂の木製の雨樋とのことです。雨樋が広く普及されるようになったのは江戸時代に幕府が防火のために民家にも瓦葺きの屋根を奨励するようになった頃だといわれています。ところで以前、外国人旅行者の方から鎖樋をみて何かと聞かれたことがありました。神社仏閣やちょっと古い家の玄関先にあったりしますよね。鎖樋は屋根から導かれた雨水が鎖を伝うように排出されるのを目で楽しむ、日本発祥の建材とのことです。縁側などもそうですが、機能だけではなく、家と自然との調和を考えたり、季節や情緒などを楽しみながら快適に生活できるよう工夫するところが日本人の素晴らしいところだなぁと、つくづく思います。

雨の日には、江戸東京たてもの園(小金井市)など日本の古い家屋が見れる場所へゲストをご案内すると、肌で日本建築の雨仕舞いの歴史を感じれて楽しんでもらえるのではないでしょうか?また、建築好きのゲストならば、雨の日にこそ建築ツアーをすると良いかも知れませんね。隈研吾氏の自然素材の特性を生かした建築物など見ごたえがあるでしょう。(参考資料

雨でさまざまな表現をする日本人の感性

雨の多い風土で生きる日本人は昔から雨に喜び雨に悩み…を繰り返す中で、雨の降り方や降る季節、恵みの雨か脅威の雨か…など、雨の違いによって、それぞれ呼び名を付けてきました。一説には400語以上の呼び名があるとか。ちなみに梅雨(つゆ・ばいう)は梅の実が熟す時期の雨ということから付けられた呼び名ですが、昔は黴(カビ)の生える時期から黴雨とも書き表したそうです。他にも春雨、五月雨、神立、霧雨、時雨、涙雨、翠雨、甘雨、慈雨…など、何とも情緒あふれる美しい日本語ですよね。また、雨をテーマにたくさんの和歌や俳句も詠まれてます。万葉集では雨で女性のもとへ通えない男性の切ない恋心を詠んだ歌が多く、新古今和歌集では雨そのものをしみじみと詠んでる歌が多いようです。俳句では松尾芭蕉の「奥の細道」からの一句、「五月雨をあつめて早し最上川」があまりにも有名ですよね。浮世絵でも雨を描写した素晴らしい作品が多く残されています。歌川広重の「大はしあたけの夕立ち」は海外でも高い評価を得ています。雨を「ただの雨」と捉えず、さまざまな感情と結び付けたり文学や芸術で表現したり、日本人の感性は本当に奥深いですね。先人たちにならって雨に情緒を感じてみれば雨の日が愛おしく思えてくるかもしれません。


以上、如何だったでしょうか?

筆者もじつは雨の日が苦手でしたが、雨のプラスの面を調べているうちに本当に雨の日も悪くないなと思えてきました。皆さまにも少しでもそう感じていただけたら幸いです。

しっかり雨対策をして雨の日もガイディングを大いに楽しみましょう!

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