【通訳案内士のためのケーススタディ】興味が異なる複数組のグループツアー

通訳ガイドスキルアップ

街人道ケーススタディです。

開始時に宣言していた4週連続更新の最終回になります。
1〜3弾はこちらから。

これらのケースは、実際によくありますし、よく聞くものです。
でも、体験していない人には、ぴんと来ないかもしれません。

イレギュラー事態を想定するには、想像力が大事です。

自分がこういう場面に出くわしたら…?
そう考えながら向き合ってみてください。

ケース#004:興味が異なる複数組のグループツアー

あなたは、9:00集合 9:15出発のツアーのガイドです。ゲストは2組4名(各2名ずつ)です。
ゲストは、アメリカ人とフランス人ということは事前にわかっていました。

当日、9:00には2組のゲストとも集合しました。
双方とも40台前後のカップルで、いい雰囲気です。今日は大丈夫かな、と一安心しました。

ツアー中盤、賑やかなショッピングストリートに差し掛かりました。

アメリカ人カップルはとても買い物に興味津々で一つ一つのお店の中に入っていってしまいます。
そして、いろいろ商品について質問してきます。
フランス人夫婦はそれほど興味もなく、流れるままについていき、
ガイドの話にも興味がなさそうながらも、うなづいています。

あなたらならどうしますか?

興味・関心の近いゲストであれば、通訳案内士としても進めやすいですが、
世の中色んな興味の方がいます。

そして、遠慮して自分の意見を出さない人もいれば、
ガンガン前に出て主張してくる人もいます。

そうした方々を束ねるもの通訳ガイドの大事な仕事です。

さぁどうすればよいでしょうか。

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(対応例と解説)ケース#004:興味が異なる複数組のグループツアー

(対応例⓵)

興味関心が異なるゲストで難しい。
でもアメリカ人カップルからの質問に答えないわけにもいかない。
彼らは買い物を本当にしたそうだし、困ってそうだ。
フランス人は興味がなさそうではあるものの、うなづいて話を聞いてくれるし、
退屈しているっていうわけでもないだろう。
このままこの時間はアメリカ人を優先して、あとで、フランス人を優先する時間をつくろう。
あ、そう思ってたら後の時間がほどんどなくなってしまってきた…まずい。
「ほら、時間が無くなってきた、急いで!」

(対応例②)

興味関心が違うからこそ、自分が引っ張っていかねば。
最初にミートしたときに時間の目途を伝えていなかったのは失敗だった。
ちょっと押してるけど、ここからちゃんとタイムマネジメントしていこう。
「次にxxに行く予定でそこで1時間ほどは必要だから、ここではあと10分です!」
アメリカ人カップルは時間を見て買い物をあきらめ、
フランス人夫婦はちょっと安心したように見受けられました。
時間はちょっと押していたものの、そのあとの旅程で少し巻いて、
時間通りにツアーを終了することができた。

(対応例③)

興味関心が違うゲスト。こういう時こそ通訳案内士の腕の見せ所。
最初ミートしたときに時間の目途を伝えてなかったのは失敗だったけど、
ここからのベストを尽くそう!
「次にxxに行く予定で、そこで50-60分必要だから、ここで使える時間はあと20分くらいかな。」
「全てのお店回り切れないけど、何か特にみておきたいものある?」
アメリカ人カップルからは、ブランド店、和雑貨と具体的な要望が出てくる一方、
フランス人夫婦は、やはり特にないようだ。
ブランド店は解散場所のエリアにもあることを覚えていたので、そちらを提案し、
ここでは和雑貨店に行くことにした。
候補は2つあったけど、店員さんが英語を使えるお店に行くことにした。
「こんにちはー。この方々が、お土産になる和雑貨を探しているようでして…」
5分後くらいに戻ってくるね、と言い残しアメリカ人カップルを店員さんにつなぐ。
そして、今度はフランス人夫婦の方に行き、
「このエリアには面白いところがあるんだ。特別に紹介するよ。」と和雑貨店の横のお店を覗きにいった。
アメリカ人カップルも買い物ができ、フランス人夫婦もいい時間を過ごしていただくことができた。

(解説)
さて、あなたならどの通訳ガイドさんに、ガイドしてもらいたいと思いますか?

ここでは顧客感情の視点から考えます。

大きく顧客感情は4段階に分けることができます。

感動:想像以上だった
満足:思っていた希望をかなえてくれた
納得:最低限の要望に応えてくれた
不満:最低限の要望にも満たなかった

当然通訳案内士としては、満足・感動を目指していくことになります。

「最低限の要望に応えればいいじゃん!」って思うような人は、
最低限の要望にも応えられないですし、
そのような人は価格競争に巻き込まれ、淘汰されていくことでしょう。

通訳案内士の資格の既得権を守ろうとする人の中にはこういう人も多いように感じます。
満足・感動をゲストから勝ち得ている人は、資格を持っている人の中でも一歩抜けていて、
無資格ガイドが入ってこようがその競争に巻き込まれない自信を持っています。
(もちろんそうでない人も多くいますが。)

最低限でも満足、更にその上の感動、感激を目指しましょう。

「急かす」「行く場所に行けなくなる」などといったことは、
最低限の要望にも満たないので、不満につながります。
自分の要望を聞いてもらえたアメリカ人カップルはまだしも、
他人の要望をガイドが聞いたために、当初の予定が狂ったらどう感じるかは想像に易いです。

時間を切って、対応例②のように、ちゃんとタイムマネジメントしたらどうなるか。

悪くはないかもしれません。
でも、アメリカ人カップルからしたら、
「そもそもツアーの時間が短かった」という行程に対する不満をもつかもしれません。

「ガイドは良かったんだけど、ツアーはいまいちだった」という口コミもよく目にしますが、
それはゲストの優しさであって、ツアーがいまいち=通訳ガイドに不足があった、ということです。
どんなツアーであっても、ゲストを最高に楽しませるのが、エクセレントガイドです。

では、この場合何ができたか。

正解は1つではありません。
でもいかに期待を超えることができるか、というのは一つのポイントです。

限られた時間の中で買い物をしたいゲストに、
ここで買うべきは△△で、他は○○で買える、というは一つの提案です。
もしかしたら、宿をきいておいて、その近くを提案するのもあるでしょうし、
別日に来るといいよ、と言い、行き方をメモで渡してあげるのも一つでしょう。
終了場所からも近く、自分にも余裕があれば、
「解散後に一緒に戻ってこよう」と言ってサポートしてあげているケースも見かけます。

また、買い物につき合わされているゲストに対しては、
いかにその時間を楽しませてあげることができるか、が肝です。
興味関心の異なるゲストの場合、
どちらかに興味があることに時間を使っているときは、
神経は逆の興味がなさそうなゲストに使います。
買い物であれば、多言語対応可能なお店を押さえておけば接客は店員に任せて、
自分自身はそのゲストと会話を楽しむということもできます。
それぞれの興味関心をバランスよく、両方めぐっていくというのも一手でしょう。
文化・歴史に興味関心がある人とない人だったら、
いかに文化・歴史の話をしながらも、ポップにユーモアを織り交ぜていけるかが大事な時もあります。

いずれにせよ、大事なことは2つ。

一つ。
日ごろから相手の興味関心を探る意識をする。

一つ。
日ごろから引き出しの数をとにかく増やす努力をする。

ゲストの興味関心がずれていることに気付けないなんて最悪です。
気付けても、対応できなければ無力です。

通訳案内士は総合力勝負です。

日々精進していきましょう。

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