FUTABA Art District
「FUTABA Art District」とは、福島県双葉町をアートだらけにするプロジェクトです。
双葉町は、3.11の原発事故で唯一全町避難が続いている町です。
JR双葉駅周辺など一部ではすでに避難指示が解除され、2022年6月には「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」の避難指示解除が予定されています。現在は、立ち入り規制も緩和され、インフラ整備などが進められています。
このプロジェクトは、株式会社OVER ALLsの代表である赤澤さんが、福島県双葉町で「JOE’SMAN」を経営していた高崎丈さんの世田谷区にあるお店「JOE’SMAN2号」に偶然訪れたことをきっかけに出会い、赤澤さんの「日本でも、ART DISTRICTを実現させたい」という想いと、高崎さんの「双葉町をアートで再生させたい」という考えが一致したことで生まれました。
Art District (アート・ディストリクト) とは…
工場地帯や倉庫街のエリアを、アーティストに貸し出すことで、フォトジェニックなスポットに変化させ街の価値が上がった海外(ロサンゼルス)のエリアのこと
引用元:http://www.overalls.jp/cn32/cn1/futaba-top.html
2022年3月初旬に実際に現地を訪れ、FUTABA Art Districtを観てきました。
【この記事を書いているのは…】
エダ アサヒ
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福島県中通り出身。好きな福島フードは、とら食堂のチャーシュー麵と木乃幡の凍天。
1.「Graph Balcony 〜FUKUSHIMA〜」
1つ目は、双葉駅前の「キッチンたかさき」・「JOE’SMAN」跡地の外壁に描かれました。
これは、ロミオとジュリエットをモチーフにした男女のアートです。女性の前の柵は放射線量を表し、そして男性は防護服を着用しています。その数値が下がることで2人は結ばれるという、原発事故の終息を願う思いが込められています。
2.「HERE WE GO」
2つ目のこのアートも第1弾と同じ「キッチンたかさき」・「JOE’SMAN」跡地の外壁に描かれています。
「JOE’SMAN」を経営していた高崎さんがこの手のモデルとなっています。
書かれているHERE WE GOは「ここから行く」という意味です。
かつて町の人々に愛されたお店が存在していたHere(ここ)から新たなスタートを、という存在証明と未来への強い意志が込められています。
3.「ファーストペンギン」
「Here We Go」のすぐ隣に描かれている壁画のモデルの女性は、昔から地元の人に愛されているファストフード店「ペンギン」の元店主・吉田さんです。
吉田さんは「ペンギンのおばちゃん」の愛称で親しまれ、地元の高校生たちの相談にも乗っていたそうです。
ペンギンは2020年に産業交流センター(F-BICC)の1階フードコートで、13年ぶりに営業を再開しました。町で最初に再開した飲食店ということで、この壁画は「ファーストペンギン」と名づけられました。
4.「FUTABA」
4つ目の作品は、元々ブティックだった建物に、オーナーのお子さんの震災当時(2歳)の姿と、10年後(12歳)の姿が描かれています。
この10年間、時は止まっているようで進んでいて、子供たちは成長している。そんな時の経過が描かれています。
この壁画は「キッチンたかさき」跡地の道路を挟んだ反対側にあります。
5.「BACK TO THE FUTABA」
5作品目は、4つ目の「FUTABA」に上書きされたもので、変化が表現されています。
家族と一緒に10年ぶりに少年が双葉町を訪れるというストーリーになっていて、フロントガラスには現在の双葉町、バックミラーには過去の双葉町が描かれています。
カーナビには、震災が発生した日、10年後、20年後の日付が書かれていて、バックミラーに映る少年は4作目の絵をベースとし、よく見ると、その後ろにはかつて双葉町に掲げられていた看板の文字が見えます。
6.「HERE WE ARE~ヨイショ!~」
6つ目は、東日本大震災・原子力災害伝承館と双葉町産業交流センター近くに位置する双葉中央アスコンの外壁に描かれています。
双葉町の伝統行事であるダルマ市の一大イベント「巨大ダルマ引き」をモチーフに描かれています。描かれている手はお年寄りから小さな子供までの老若男女で、復興を手繰り寄せるという願いが込められています。
手綱を持つ手は双葉の人をモデルに描かれており、一番左の赤く染められた手のモデルは「JOE’SMAN」高崎さんで、右から2つ目の緑に染められた手のモデルは「FUTABA」の少年です。
写真一番奥の、黄緑色に染められた小さな子どもは生まれていないため震災を知りませんが、「双葉」に思いを込めて両手は黄緑色で染められています。
7.「だるまさんがすすんだッ」
7つ目は、JR双葉駅前の東邦銀行の外壁に描かれています。
6つ目と同様にダルマ市の「巨大ダルマ引き」がモチーフとなっています。
ダルマの左目には、「巨大ダルマ引き」の景色が描かれています。
また、ダルマが染められている赤・青・黄のばらばらの色は、東日本大震災以来ばらばらになってしまった双葉町民を表しているそうです。
ばらばらになっても、双葉町の人々は未来に向け前進しています。
そして、町民が再び集まり、この3色が混ざり黒になる日、人々の手によってだるまは進みます。
8.「常~NOrMAl~」
8つ目の壁画も「HERE WE ARE~ヨイショ!~」と同じ、双葉中央アスコンの外壁に描かれています。モチーフとなったのは、1000年以上続く伝統行事「相馬野馬追」です。国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
お祭りに関わる人々にとって、野馬追は特別なことではなく、日常の一部です。
震災後の2011年も規模を縮小して開催し、中止することなく行われました。
この壁画では、2つの日常、鎧兜を纏う姿と、復興に向けて動く人々の日常が重なります。
終わりに
3月10〜12日に新たなアートが双葉町に描かれました。
描かれたアート、1つ1つに双葉町への思いが込められています。
壁画が描かれた建物の中には取り壊しが決まっているものもありますが、
アートで彩られた双葉町をぜひ一度訪れてみてください。
アートをきっかけに、多くの人が訪れ、正しい情報や現状への理解を深めていただければと思います。
また、アートを見に行った際に「双葉町タウンストーリーウォーキングツアー」に参加してみませんか?ツアーを通し、双葉の以前の町並みや伝統、被災当時のことを、地元の方のお話を伺いながら知ることができます。
弊社では、福島沿岸部訪問ツアーを、外国人向けに催行しています。
コロナ禍において不定期でツアーやオンラインツアー等も実施しているので、是非サイトも覗いてみてください。
JapanWonderTravel.com(英語ページ)
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