ガイドが伝えたい伊勢志摩の魅力①

伊勢志摩の魅力

観光を日本の新たな産業として発展させるにあたり、観光庁の注力している施策のひとつに『地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり』があげられます。

現在「モデル観光地」は全国に14地域ありますが、羅針盤では、2024年から伊勢志摩および周辺地域エリアでガイド育成のお手伝いをしています。

この記事では、本年度研修の修了者の方々から、伊勢志摩の魅力と、これから伊勢志摩のガイドをしてみたい方へのメッセージをお伝えしていただきます。

筆者紹介

元New Yorkerの全国通訳案内士。

伊勢生まれ、内宮の近くで育ちました。

海外で建築やアートを学ぶ中で日本文化の奥深さと精神性を再発見。
現在は伊勢志摩を拠点に、文化や暮らしの背景にある物語や想いを伝えるガイドとして活動しています。

伊勢神宮をはじめとする自然や歴史を感じる旅を通して、
訪れる方と同じ目線で体験し、その場に生まれる発見や感動を大切にしています。

私がインバウンドゲストに伝えたい伊勢志摩の魅力

私は伊勢志摩が大好きです。

伊勢志摩といえば、伊勢神宮や美しい海を思い浮かべる方が多いと思います。けれど、私がこの土地を好きな理由の一番は「人の温かさ」です。 時におせっかいに感じることもありますが、その奥には必ず相手を思う気持ちがあります。

伊勢は、古くから参拝者を迎えてきた歴史からか、人を迎え入れることが暮らしの一部として、今も私たちの生活に息づいています。

鳥羽や志摩の漁師町に暮らす人々の活気と気前の良さも、大きな魅力です。信号も交番もない、どこか懐かしい町並みが今も残っています。

私はこれまで、地元が嫌いだという伊勢の人に出会ったことがありません。それほど、みんながこの土地を愛しています。その理由は、伊勢志摩に流れる穏やかな空気と、人の温もりにあるのだと思います。

ここには、昔から変わらない時間が、今も静かに流れています。

私は高校留学で海外に出たことで、改めて日本の文化の魅力に気づきました。アートを専攻していたこともあり、世界各地の文化やその背景にある思想を追うことが好きでしたが、次第に母国の文化に強く惹かれていきました。

その後、ニューヨークで建築学を学んでいた時、日本の特殊な建築文化の象徴として紹介されていたのが、伊勢神宮の式年遷宮でした。教科書に載っていたのは、私が幼い頃から見慣れていた内宮の写真。当たり前だった風景、当たり前だった暮らしが、世界から見たときに、非常に特異で貴重な文化であることを知りました。

伊勢志摩では、2000年以上続く神道と隣り合わせの暮らしが、今も日常として続いています。1993年、内宮領民として子ども木遣をして参加した式年遷宮。帰国後参加した2013年。そして次は2033年。

100年後も何も変わっていない文化が残って欲しいです。

日本には多くの魅力的な観光地があります。賑わいのある大都市、有名な名所、洗練された文化。ですが、伊勢志摩には、派手さや分かりやすい建物はありません。
とても素朴です。その代わりに、長い時間をかけて積み重ねられてきた、人と自然、そして神々との暮らしが、ほとんどそのままの形で残っています。
伊勢志摩国立公園は、国立公園でありながら、その多くが神宮の領域と人々の生活圏です。自然を囲い込むのでも、排除するのでもなく、“調和”して生きている。
この見えない世界観は、ガイドと旅をすることで見えやすくなります。 日本人がどのように自然と向き合い、神々と共に暮らしてきたのかを、静かに感じてもらえる土地だと思っています。

ここには、森があり、川があり、海があり、そして暮らしがあります。この小さな国立公園の中で、生命の循環が古代から繰り返されてきました。

伊勢志摩の自然は、支配するものでも、守る対象として切り離すものでもなく、共に生きる存在として受け取られてきました。その恵みに感謝する心が、神道というかたちになったのだと想像します。

この感覚は、日本人にとっては無意識のものですが、海外の方にとっては、とても新鮮に映るでしょう。聖書もなく、お経もなく、決まった答えや正誤もありません。感じ方は人それぞれでいい。自然界が絶妙なバランスで成り立っているように、すべては調和しています。

神棚の中心に置かれる鏡。伊勢神宮に祀られているのも、天皇家に伝わる鏡です。神道とは、自分自身を映し、その呼吸や循環を感じる“調和の世界”なのだと思っています。一人ひとりの暮らしも森羅万象の一部。この自由さこそが、自然そのもの。神道の本質だと感じています。

日本人にとっても伊勢志摩は観光地でありながら、そうではない。 ここに訪れる多くの人は、“想い”を持って足を運んできてくれます。伊勢神宮について語ろうと思えば、その文化はどこまでも深く、終わりがありません。けれど、ここはぜひ、来て、見て、感じてほしい場所です。

伊勢志摩に息づく、この生活様式は、宗教や文化の違いを超えて、多くの人の心に触れる力を持っていると信じています。私は、インバウンドゲストにも日本人の皆様にも、自分自身の文化や価値観を大切にしてほしいと願っています。

伊勢志摩は、訪れる人の人生の見え方を、少しだけ変える力を持った土地だと思っています。その力を、国境を越えて分かち合いたい。それが、私がインバウンドゲストに伊勢志摩を伝えたい理由です。

もしゲストが私と共に旅をして、自分自身の在り方に立ち返るような気づきを持ち帰ってくれたなら、それ以上の土産はないと、私は思います。

そしてもう一つ、私が大切に伝えたいものがあります。伊勢志摩には、3000年続く海女文化があります。私は潜る人ではありませんが、海女の血を引く家系の一人として、この文化を未来に残したいと強く願っています。海と共に生き、必要以上を取らず、命に感謝する。伊勢志摩が持つストーリーと、生き方そのものを、これからも伝えていきたいです。

ガイド育成研修を通して学んだこと

この研修だけでひとつのコースが作れるほど、非常に質の高い内容でした。マナー研修に始まり、ベテラン通訳案内士さんによる現場実演では、すぐに活かせる知識や小ネタ、経験に基づく工夫を惜しみなく教えていただきました。

さらにモニターツアーで実践の機会もいただき、ガイディングスキルだけでなく時間管理やコミュニケーションの重要性を体感しました。
特にゲストとの向き合い方はこれからも磨いていきたいです。旅の記憶に残る存在であるための在り方と、心地よい時間を提供する意識の大切さを学べた有料級の研修でした。

伊勢志摩のガイドをしてみたい人へのメッセージ

伊勢志摩は、ただの観光地ではなく、歴史・自然・祈り・人の暮らしが重なり合う特別な場所。

ガイドの案内次第で、小さな気づきが、大きな感動に変わる瞬間があります。旅の見え方が変われば、思い出は何倍にも広がる。

そのワクワクを届けられる存在になること、私も目指していきたいです。

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