ガイドインタビュー Vol. 4 保里陽子さん

インタビュー

この記事では、第一線でご活躍されている通訳ガイドの方をインタビューし、コロナ以前/コロナ禍での自己研鑽の方法や、今後の目指す姿などをお伺いします。

第4回目となる今回は、グループツアーからクルーズまで、幅広いツアーを柔軟にこなすエクセレントガイド・保里陽子さんにお話をお伺いします。豊富なガイド経験のことや、語学力や知識量だけでないガイディングスキルの磨き方などをお伺いしました。

全7回のインタビューはコチラから。

ガイド紹介

保里 陽子
1991年に全国通訳案内士の資格を取得。旅行代理店の仕事を通じて多くの通訳ガイドの仕事を手掛けている。現在はクルーズやゴルフツーリズムなど、ガイドの仕事の幅を広げて活躍中。

ガイドになるきっかけ

ーーー ガイドになったきっかけは?

 通訳ガイドになる前はアメリカの大学と大学院に行っていました。日本に戻ってきて英語を教えるしかないということで、英語教師を3ヵ月くらいやっていましたが、クラスルームでじっとしてやるのが自分の性に全く合わず、好きではありませんでした。
あのときはまだ若くて、学校で何をしたらいいかわからなかった。
「このままではダメだ」と思い、英語を使った他の仕事をやってみたいと思うようになりました。
あるとき、高校時代いろいろな場所に行くのが大好きで、種子島に行ったり旅行ばかりしていたことを思い出し、旅行が出来て英語のスキルを活かせるような仕事がないかを探していたところ、全国通訳案内士の仕事の存在を知り、通訳案内士の試験を受けました。

仕事の獲得方法

ーーー 通訳案内士の資格取得後、どのように仕事獲得を?

 派遣のような場所に行って、仕事をもらっていました。その頃はFITのようなツアーがなかったため、紹介でグループツアーなどの仕事を受けていました。
当時ガイドの需要はあったので、仕事を探さなきゃいけないということはなかったです。
先輩のガイドがとても良い方だったので、ツアーガイドについて手取り足取り教えてくださって、そこでかなり訓練しました。
東京→日光→箱根→京都というルートが同じツアーを、ずっと繰り返しやっていたので、対応などを学んでいきました。
すごく楽しいと思っていましたが、もっと仕事の幅を広げたいと思い、旅行代理店の方にセールスへ行ったら、そちらに雇っていただけることになりました。そこのガイド仲間たちはみなさん若くて、20代後半〜30代前半ぐらいが多く、一緒に東京や京都のツアーガイドを楽しくやっていました。仕事終わりには一緒に飲みに行ったりしていましたよ。

ーーー そちらの旅行代理店の仕事の後は、どのように仕事を貰っていましたか?

 今でもその旅行代理店から仕事を貰うことはあるのですが、他の旅行代理店からも紹介経由で仕事を多く頂けるようになりました。そこは大手企業関連の仕事が多く、インセンティブを多くいただけました。そこで企業の方が私の仕事を気に入ってくれると、ずっと私を指名してくれたので、あまり自分から強くセールスをした経験はないんです。
一本一本ツアーを大切にこなしていったので、相手の方から「では次回もよろしくお願いします」という流れになることが多く、それで今に至ります。たまたま人との巡り合いもあったと思うんですけどね。命懸けとまではいきませんが、他の人より絶対上手くやりたいと思って、物凄く努力した実感はあります。

ーーー なるほど。確かに今までお話をお伺いした中で、多くのガイドの方が紹介等で仕事を得て、一つ一つの仕事を大切にこなして今があるとおっしゃっていました

 そうですよね。多分、自分から売り込まなくても向こうから来ると思うんですよね。自分に対して甘いかもしれませんが、私は今までそういう風にやってきました。

ーーー 2019年のガイドは年間何日ほどガイドをやられましたか?

 その年は270〜280日ぐらいやっていましたね。

ーーー それはFIT?グループツアー?

 この5年ぐらいはクルーズツアーが多かったです。クルーズは一回乗ると40日〜50日ずっと乗っているんです。お客様と一緒にオンボードタイプで毎日寄港地に船は寄るんですが、船に毎日お泊まりするような感じでしたね。中でパーティーなどがあるのでそこで通訳をやったりしていました。また、寄港先でも、ローカルガイドさんに混じって、未知の場所であっても、その場所を案内しなくてはいけません。そのために、事前にネットで情報を得たり、ローカルガイドさんに聞きまくったりしていました。
長いツアーだと3ヶ月にも及びます。日本中を周って戻ってくることが多かったです。

ーーー クルーズは年間何日ぐらい?

 クルーズとしては100日ぐらいですね。

ーーー クルーズ以外の仕事としては?

 企業の仕事が100日ぐらいで、残りがゴルフツアーや陸地を行く観光ツアーでした。

ーーー 参加者はどういった国籍が多かったですか?

 アメリカ、あとは特にオーストラリアですね。観光に来るオーストラリア人があまりにも多くて、オーストラリア英語を身につけてしまいました。

ガイドに必要なスキル

ーーー ガイドで求められるスキルとは?

 知識とか語学力は、もう当たり前だと思います。語学力に関しては発音が良いとかではなく、コミュニケーションが出来なければダメなんです。お客様に一方的に知識を説明するだけではなく、会話を通じて「お客様が今何を欲しているのか」を察して対応することが重要だと思います。知識をただ与えるだけではお客さまは全然満足しませんからね。
お客さまの気持ちにうまく寄り添って、求めているものを察しパッと出してあげることです。そしていつも楽しくポジティブに、時折ユーモアを交えることですね。

ーーー なるほど。そういったコミュニケーションを通じて相手の心を察したり、寄り添ったり、ユーモアを交えるのに具体的に努力されていることはありますか?

 ユーモアに関していうと、多くのお笑い芸人の中につまんない人っていないじゃないですか。多分そういったお笑いの素質を持ってお笑い芸人の方々は生まれていらっしゃると思うので、自分も生まれながらにユーモアの素質は持っていると思います。ただそれでも私はお笑い番組のテレビを見て、色々なお笑いのツボを学んで努力しました。日本語のネタと英語のネタには違いがあるかもしれませんが「こういうツッコミをしたら楽しいだろうな」とか、「こういうオチをつけたら面白いだろうな」と考えていました。特にオチはいつも考えていますね。

ーーー 察する力に関しては?

 少し何かを言ってみて、相手の反応がどうかをいつも気にかけています。あとは話を出来るだけ短くするようにしています。ガイドは話を長くするとカッコいいとか、情報を多く与えることができると思いがちなのですが、実はお客さまはそんなに求めていないんです。日本語でも英語でも同じですが、その話がシンプルで簡潔にまとまっているかどうかが大切です。

ーーー 常日頃、日本語でも英語でもそういったコミュニケーションを意識をされているのでしょうか。

 というより、ちょっと言ったら相手の反応って分かりますよね。それで相手が食いついてきたらもっと長く話さなければと思います。あと日本語で言ってもこれだけ言ったら相手がお腹いっぱいそうだなと思ったら、次の話題に行くようにしています。これは相手の気持ちを読むことですし、情報は短ければ短いほどいいと思います。

自己研鑽について

ーーー 当初ガイドになったときや、現在他のガイドと差別化を図るために、具体的にされていることはありますか?

 最近の方が言いやすいかもしれません。最近はマインドフルネスや禅などに興味があるお客様が多くて、そちらをツアーに取り込みたいと思い、よく自分で勉強していました。お客様からどこか瞑想のおすすめスポットはないかと聞かれたとき、「では静かな場所で実際にやってみませんか?」という機会を考えて出来るように、自分で禅の本をよく読んでいました。ある意味、自分のマイブームですね。

ーーー 禅に関して本以外にどのような勉強を?

 禅に関するレクチャーを受けたり、鎌倉の建長寺に赴いてお坊さんのお話を聞いたり、瞑想をしたりしていました。
座禅を組んだりもしています。あとはインスタで気に入ったお坊さんをフォローして、その方が投稿している一日一言を毎日必ず読んで、どうやってその言葉を英語で訳せば良いかなと考えたりしています。
今後コロナが落ち着いて、東京にお客様がいらっしゃったら、ツアーで瞑想ができる場所にご案内してみたいですね。但し、瞑想の場所は静かにしないといけないため、通訳禁止の場合が多く、それがネックではありますが、将来はそういったツアーも考えていきたいと思っています。

今後の自分の展望

ーーー 今後描いていきたいガイド像は?

 コロナを通じて、ガイドとしての仕事を今まであまりにも走りすぎたと思ったので、これからローカルな仕事をして行きたいです。例えばFITとかで増上寺と東京タワーの対比を説明したり、鎌倉のツアーに行ったりとかですね。あとはゴルフツーリズムもやっていきたいです。多くのオーストラリア人の方と仲良くなったので、そういった方達が日本に来た時に、誰もいないときは私が添乗に行って一緒にゴルフやったりして、バンバン手配できるようにしてあげたいです。

ーーー 保里さんにとってガイドのやりがいとは?

 ガイドを通じてお客様の人生が変わってしまうことがあるんですね。「本当に楽しかった」、「こんな国じゃないと思っていたのに、物凄く魅力や発見があった」、「本当に素晴らしい時間を過ごした」と言ってくれるお客様がいて、お金を貰ってお客さまにこんなに感謝される仕事ってあまりないと思います。それが「今まで本当にやってきてよかったな」と思うことですし、ガイドの醍醐味かなと思いますね。

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