インバウンドの復活に伴い、俄かに観光ガイドの仕事にも注目が集まっています。
東京や京都等を歩くと、多くの外国人を見かけるとともに、外国人と一緒にいるガイドの姿を目にすることも増えているのではないでしょうか。
どんな人がガイドをやっているの?
どうやったらガイドになれるの?
ガイドってぶっちゃけ儲かるの?
ガイドの仕事の醍醐味は?
どんな時が楽しかった?どんな事件があった?
そんなガイドの実態に、アンケートを通じて迫ります!
332名の全国通訳案内士の方々にお聞きしました。
「通訳ガイドって儲かるの!?報酬とその魅力に迫る」です。
―「全国通訳案内士とは?」-
「ガイドって儲からないんでしょ」
そういうイメージを持っている方も多いかと思います。
国際交流・社会貢献出来て、楽しそうだけど、仕事としてやっていくには、やはりその報酬や待遇も大事になってきます。下世話かもしれないですが、お金の話は「職業」として大事です。
そこで、まずは皆様に赤裸々な報酬事情を聴いてみました。
- Q.2023年1-12月の通訳ガイドとしての報酬(チップ除く)を教えてください
- Q.2023年1-12月の通訳ガイドとしての稼働日数を教えてください
- Q.1日(8時間)あたりの報酬はいくら受け取っていますか?
- Q.コロナ前に比べて仕事が増えましたか?
- Q.コロナ前に比べて1日あたりの単価が上がりましたか?
- Q.コロナ前と比べて他にどんなところが変わりましたか?
- Q.チップを過去に貰ったことがありますか?
- Q.2023年1-12月の通訳ガイドにおけるチップによる報酬を教えてください
- Q.チップにまつわる過去のエピソードがあればご記入ください。
- Q.通訳ガイドの仕事の魅力は何だと思いますか?
- Q.通訳ガイドをやっていてよかったなと思ったエピソードをご記入ください
- Q.通訳ガイドの仕事をやっていて一番辛かった時のエピソードを教えてください。
- Q.通訳ガイドの仕事をやっていて一番の失敗談を教えてください。
Q.2023年1-12月の通訳ガイドとしての報酬(チップ除く)を教えてください
332名の回答中、2023年に活動のあった267名を対象に集計を行いました。
結果、半数近くは100万円に満たないという結果でした。
しかし、平成26年に観光庁の集計した結果と比べ、400万円以上と回答した方が、全体の4.0%(回答者の5.4%)だったことを踏まえると、本調査では全体の10.1%(回答者の11.0%)ということもあり、状況が好転していることが見て取れます。
また、ガイドは、リタイヤされてはじめている方もいれば、兼業でやられている方も多くいるため、60歳未満の専業に絞って集計を見た結果は、20%(回答者の25%)が400万円以上を稼いでいるという結果でした。
主婦・主夫の方がガイドをはじめているケースも多いため、半数近くが300万円未満という結果ではあるものの、一定専業で食べていけている方もいるというのは今後の励みにもなります。
Q.2023年1-12月の通訳ガイドとしての稼働日数を教えてください
何日くらい働いた結果の報酬かを確認するために、1年間での稼働日数(ガイドをした日数)を聞いてみた結果がこちらです。
年間100日以上稼働している人が2割いるという状況です。
昔は、桜や紅葉の繁忙期しか仕事がないという人も多かったのですが、コロナが空けて、年間を通じてガイドの仕事が発生していることも見て取れます。
ちなみに、普通のサラリーマンが週休2日で、祝日・夏季休暇等があると240日が労働日数です。有給休暇等を考えると実働230日くらいが一般的でしょうか。
通訳ガイドも、ガイドしている日以外にも下見に行ったり、事務仕事があったりするので、実際の労働日数はもう少し多いですが、200日以上ガイドしているという方は1%ちょっとでした。
年収=稼働日数×単価 ということで、1日あたりの報酬についてもアンケートで聞いてみました
Q.1日(8時間)あたりの報酬はいくら受け取っていますか?
1日2万円以上3万円未満というのが最多価格帯でした。また、5万円以上を報酬としてもらっている人もいます。最近では、週末の副業としてガイドをやっている人も出てきています。
週1日副業として4週間やれば、約10万円を副業として稼げるのも、語学の勉強にもなり、国際交流にもなり、懐も潤うというのは、一つの週末の過ごし方かもしれません。
Q.コロナ前に比べて仕事が増えましたか?
ちょうど水際対策が緩和して1年が経過したということで、コロナ前から活躍されている方にコロナ前との違いを聞いてみました。
過半数の方が「仕事が増えた」と言っており、コロナ前より需要が増えている様子が伝わってきます。
Q.コロナ前に比べて1日あたりの単価が上がりましたか?
加えて単価について聞いてみたところ3分の一強で単価も増えたとの回答がありました。
「ガイドがいない」状況が続く中で、ガイドの価格交渉力が上がっている結果でもあります。
活動数も単価もコロナ前に比べて一気に環境が改善している様子が見て取れます。
Q.コロナ前と比べて他にどんなところが変わりましたか?
ちなみに他にどんな変化があったかを聞いたところ次のような回答がありました。
仕事の単価が増え、チップも金額も増えました。特に日本の大手旅行会社に関しては上がらず、トラベルデザイナーやエージェントからの単価が上がっています。
コロナ前は、ほとんどのツアー旅程は、1日のスケジュールをガチガチに詰め込んだものが多かった。昼食や夕食も決められ、そのため、肝心の観光地の訪問時間は大変神経質になっていた。昼食予約や夕食予約は絶対に時間厳守だから。昼食時間や夕食時間を中心に考えねばならなかったので、本来目的の大切な観光地訪問を短くしたり、とかもあった。どこか、馬鹿げていた、というか。コロナ後は、旅行会社様も学習して、非常に時間にゆとりを持たせたツアーが増えた。本来、あるべき旅行の姿になってきたと感じている。
個人的にコロナ前は団体のスルーツアーをやっていて、今は個人の日帰りツアーをやっているので、何もかもが変わっているので比較は難しいです。ただスマホや人工知能などの発達で、単純な通訳や道案内のガイドは不要になりつつあるように感じており、付加価値を提供できるガイドになりたいと考えています。
インバウンドが更に活性化していく中で、ガイドを副業ではじめてみるのは今かもしれません。
Q.チップを過去に貰ったことがありますか?
ちなみにガイド報酬とは別に、忘れてはいけないのはチップです。
日本でもお心付けの文化がありますが、特にアメリカを中心にチップ文化があることもあり、ゲストによってはチップをいただけることもあります。
実際に今年稼働したガイドを対象に集計したところ、チップに関しては下記の結果でした。
実に9割近いガイドの方がチップを顔に貰ったことがあるということでした。
Q.2023年1-12月の通訳ガイドにおけるチップによる報酬を教えてください
では、1年間でチップによる収入はどれくらいかというと、4割は5万円以上を貰っているとの結果でした!
中には、100万円以上という方も!
通訳ガイドとしての報酬に加えて、頑張れば、その分報われるというのは嬉しいですし、夢がある話です。
Q.チップにまつわる過去のエピソードがあればご記入ください。
チップに関して、ガイドの方はいろいろなエピソードをお持ちのようです。
半日ツアー2日間終了後、厚めの封筒を渡されたのでお土産と思い帰宅後開けたところ、感謝の言葉とともに5千円札で10万円入っていて嬉しい驚きでした。
円安の影響もあるかと思いますが、実際の報酬以上のチップをいただくこともあります。複数日担当して10万円以上のチップをいただくことも。「現金がない!!どうしよう!!チップをどうしても渡したいからカードで払える?」なんて言われることも。
日本ではチップはいらないんですよ、とご説明しますが、ぜひと仰っていただくお客様もいらっしゃるので、その際はありがたく頂戴します。チップはお財布の中で分けて持っておいて、ガイド中に急な出費が必要になる場面や、露天のちょっとしたスナックをお味見に買って差し上げたり、お誕生日や記念日のお客様への小さなギフトなどに活用しています。「善意の前払い」システムみたいなものと認識しています。
お金もさることながらツアー中にお客様の中国人の友人のために訪れたショッピングで私がアドバイスして手に入れたPCを空港見送りのときに手渡され、更にその架空の中国人友人のために手配した寿司のギフト券もPCの袋に入っており、更に数年後、ファーストクラス、ビジネスクラスで数週間のヨーロッパ旅行にご招待され、挙げ句プライベートジェットスイスの高級リゾートへ連れて行かれ、イタリアでは初めて日本語ガイドによるプライベートツアーで案内してもらいました。あとにも先にも一度だけですが、いまだに夢か現か分からなくなることもあります。何十年経った今もグリーティングを交わしていますので間違いなく相手は存在していました。あれをチップと呼ぶのかどうか???
素敵なゲストとの話もあれば、旅行会社に対する希望の声も多く聞かれました。
旅行社からお客に安価な旅行商品を販売するとき、この商品の旅行代にはガイドのチップも含まれているという商品もある。正直にやる気があまりでなくなる。
私の属しているエージェントでは、日本人はチップをもらうことが侮辱とされているとゲストに説明しているらしく、8割くらいのゲストはチップではなくチョコレートや小物をご用意されているのが「違う!」と思います。
エージェントによってはチップをなるべく頂かないように、と指示するところもあり、チップを固辞することがあるが、ガイド仲間から、そのゲストが他の訪問地でも『ガイドへはチップを払わなくてもよい』と思い込んでしまうと、次のガイドに迷惑がかかると言われた。
ガイド業は閑散期もあり収入が安定しない為、チップを歓迎するガイドも多いことをエージェントに分かっていただきたい。
中にはゲストとの間のほっこりするエピソードも。
日系アメリカ人のゲストと、日本人はキャッシュギフトあるよね、という会話をした。ありますよ、アメリカ人はウェディングの際にウィッシュリストなど作って心がこもってますね。多分これ大失言。浅草で舟和のお芋アイスクリーム大好きですよ、と何気ない会話。奥さんと会話しているうちにご主人消える。大量の芋ようかんをお礼にいただく( ;∀;)
「日本人はチップを受け付けない」という認識が広がっており、チョコレートなどを渡される事が多い。団体スルーツアーなどで、「帰路の荷物が嵩張って大変なのでお菓子ではなくチップを受け付けます」と本気で伝えるのだが、ジャパニーズジョークと受け取られ大ウケした結果、チョコレートの量が増えてしまう。さりげなく日本の心付けやポチ袋などのチップ文化を丁寧に説明しておくと、お客様も「日本風チップ」を実践しやすいようです。
チップだけとっても、話題のネタにはつきなさそうです。
冒頭からお金の話ばかりをしてきましたが、通訳ガイドの魅力はお金だけではありません。
ここから先は、お金だけじゃない通訳ガイドの魅力について聞いていきます。
Q.通訳ガイドの仕事の魅力は何だと思いますか?
報酬も大事だけど、通訳ガイドの魅力はどこにあるのかを聞いてみた結果がこちらです。
「報酬になる」以上に、「国際交流ができる」「語学が活かせる」という声が大きかったですし、一番多かったのは「日本のことを改めて学ぶことが出来る」という声でした。
多くの魅力が通訳ガイドの仕事にはあります。
実際にどんなエピソードがあるかを聞いてみたところ、とても興味深い話が沢山出てきました。
Q.通訳ガイドをやっていてよかったなと思ったエピソードをご記入ください
お客様とお会いしていろいろ話しているうちに好みがわかり、提案した訪問場所がお客様の趣味にハマり「あなたがいたからこんな充実した日だった」と感謝されたときはガイドをやっていて良かった、と感じます。
官公庁主催の招聘ツアーを複数回経験していますが、特にアジアからの高校生グループを担当した時、最初はシャイであまり絡んでこなかった子供たちが7日経つうちに次第に周りを取り囲んでくれるようになり、成田では号泣されたこと。まるで自分の子供たちのように思えてすごく感動しました。
感謝される瞬間やお褒めのお言葉を頂いた時、過去サラリーマン時代には経験したことないような大きなやりがいを感じる。
ガイドとしてより、地方の住民と話せて良かったと言われます。ガイド以上に、文化、生活の違う国からの人々とおしゃべりできる楽しさ。ツアーが終わったあとも交流して、外国に友達ができました。メールのやり取りをしています。
Q.通訳ガイドの仕事をやっていて一番辛かった時のエピソードを教えてください。
とはいえ、この仕事もすべてが魅力的なことばかりではありません。
赤裸々に、一番つらかった時の話も聞いてみました。
ベジタリアンのお客様を某ハンバーガショップにお連れし、ベジタリアン対応のハンバーガーを注文しましたが、玉ねぎが入っていた事に激怒されベジタリアンに関係のない他のご家族の飲食分すべて某ハンバーガショップが無料にして、謝罪された時。お客様の言い分があまりにも理不尽にも関わらず100%某ハンバーガショップが謝罪されたので、後日お詫びに伺いました。
雨の日の30名程のクルーズエクスカーションにて、隅田川クルーズ後、イベントで込み合う浅草観光。迷子を出さないことが精いっぱいでした。企画ツアーに従うしかない状況の中、テンションが下がる要素が続く中、ツアーを盛り上げるのは辛かったです。
エージェントの手配ミスで、数ヶ月前に予約した訪問場所がキャンセルになったと当日朝知らされ、ゲストに謝罪し、代替地へお連れしたこと。
直前キャンセルで立て替えた支払いを踏み倒されたとき。お友達同士の18名団体(クルーズ船)直予約。紅葉繁忙期になかなか予約できない中ランチの確保に奔走、事前払いとのことで立て替えていましたが強風のため入港できずキャンセル。ガイド代は仕方ないとしてランチ代はいろいろ理由をつけられて支払いしてくれず。。。それからはできるだけ直予約ではなくエージェントからのお仕事を受けるようにしています。
自分がその場にいたら、、、と思う話が沢山ありました。
現在活躍している通訳ガイドの方々も様々な経験を経て今があります。
Q.通訳ガイドの仕事をやっていて一番の失敗談を教えてください。
さらに失敗談についても聞いてみました。
団体ツアーで、PAで積み残し1人を発生させてしまった。
京都御所が休みの月曜日にゲストをそこにお連れした。
なぜかちょっと気が立っていたguestから、ガイドして20分くらいで首だ、と言われたこと。
最初の40名の学生のツアーで、高野山の宿坊で一人乗っていないことに気づかず出発して、お坊さんから連絡があり、お坊さんに学生さんを連れて来ていただいた。
こちらも、自分がその場にいたとするとぞっとしてしまうものばかりです。
そんな、辛かったり、失敗することがあっても、多くの方が続けているのはそれだけ魅力があるということでもあります。
これから更にインバウンドは増えていくことが予想されますが、是非、海外の方に日本の魅力を伝える立場になってみてはいかがでしょうか。