ガイドインタビュー Vol.2 村田多恵さん

インタビュー

この記事では、第一線でご活躍されている通訳ガイドの方をインタビューし、コロナ以前/コロナ禍での自己研鑽の方法や、今後の目指す姿などをお伺いします。

第2回目となる今回は、どんな客層のゲストでも柔軟に対応できるエクセレントガイド・村田多恵さんにお話をお伺いします。富裕層を対象としたガイドの極意と、上質な観光体験を提供するためのスキルアップ方法などをお伺いしました。

全7回のインタビューはコチラから。

ガイド紹介

村田多恵
フランス語&英語ガイド。2008年に全国通訳案内士試験に合格。ガイドを離れている時期もあり、ガイド歴はトータル10年ほど。コロナ以前は年間およそ150日間稼働し、FIT富裕層を中心に案内している。

仕事を得る主な方法

ーー 村田さんは英語とフランス語のガイドをやられています

はい、そうです。コロナ以前にご案内したお客様は英語圏の方が8割で、フランス語圏の方が2割でした。

ーー 基本的なことになりますが、ガイドの仕事を普段どうやって得ていますか

ガイドを始めたばかりの頃は、自分の子どもが小さく、面接に行くこともままならない状況でしたので、インターネットでガイドを募集しているところに応募して、少しずつ旅行会社や派遣会社の仕事を受けるようになりました。2014年頃に友人に頼まれて案件を引き受けたことをきっかけに、富裕層FITを催行する旅行会社から仕事を受けるようになりました。現在は、複数の旅行会社から、FITから団体ツアーまで、色々なタイプのお仕事を頂いています。また、特別なお客様の場合は、トラベルデザイナーやプライベートコンシェルジュの方から直接頼まれることもあります。

ーー ご案内したお客様の層はAffluent(裕福層:年収1000万~3000万)とHNWI(富裕層:2億円以上の財産)が中心ということですが、UHNWI(資産30億円以上)の方も含め、富裕層をご案内するにあたってイメージすることはありますか

富裕層と一括りに言ってもAffluentの方とUHNWIの方では、ご案内の仕方がまったく違います。HNWIまでの方は、ガイドの話をしっかり聞いてくださる方もいらっしゃいますが、UHNWIの方は、旅行慣れしており海外の知識も豊富なため、主体的にコミュニケーションをコントロールしたがる傾向がしばしば見られます。従ってガイドとしては、お客様の質問やリクエストにいかに素早く的確に応えるかが重要となります。タイム・スケジュール通りにご案内することよりも、お客様の気持ちや希望を最大限尊重しながら、お客様の満足度を高めていく事が大事になります。ですから、普段のガイディングと違って、コンシェルジュ的な役割や、秘書業務が出来ることも必要になってきます。

ガイドに求められるスキル

ーー 富裕者層をご案内する際、ガイドに求められるスキルは何だと思いますか

超富裕層のお客様の場合、素早いレスポンスが大切です。時間を何よりも優先するため、あたかもピンポンのように、聞かれたことに短い言葉で即座に答える必要があります。それが出来ないと、お客様をがっかりさせてしまうかもしれません。特にアメリカ人のお客様に対しては、聞かれたことにテンポよく返すことが大事になってきます。興味があればまた深く聞いてくるので、最初に詳細な返答を返すというよりは、ポイントを絞って説明し、また聞かれたときに詳しく話せばいいと思います。

しかし、これはあくまでも一例であり、全ての富裕層がそうという訳ではありません。国や言語圏はもちろん、何よりも個人ごとに皆様異なる個性を持っており、お客様が快適と感じるコミュニケーションスタイルをいかに早く理解し、それに合わせたコミュニケーションができるか、これが富裕層者をご案内する際にガイドに求められるスキルだと思います。

ーー その「ピンポンのようなコミュニケーション」を鍛えるために、日頃トレーニングしていることはありますか?

アメリカに住んでいたことがあり、その時にアメリカ人の早いテンポのコミュニケーションに慣れていきました。ヨーロッパ人は深い知識をゆっくり話すことが多いですが、アメリカ人はスピーディーに話を進めていくことが多いです。トレーニングというよりは、アメリカに住んでいた頃の感覚を大事にしています。

富裕層を対応した事例

ーー 富裕層をご案内した時の話を聞かせてください

ハリウッドの有名な映画プロデューサーの方をご案内したことがあります。東京をハイヤーで1日ご案内した後、もう1日やってくれないかと頼まれ、次の日に鎌倉に行きました。何度も日本に来たことがある方でしたので、車では英字新聞を読み、時々車窓から気になったものについて質問され、返答に満足するとまた新聞に戻るということの繰り返しでした。

この時は、やり取りのスピードを落とさず、投げられた質問やリクエストには適切に、素早く対応しました。車内では、ずっとガイドの話に耳を傾けてくれるお客様ばかりではありません。仕事仲間や家族と電話やメールをするなど、何かをしながら車で移動する事もあります。ゲストの様子を見ながら、「今、空いているな」というタイミングを見て、必要な事を伝えるようにしました。

また、バイヤー的な買い物の知識が必要だったり、子どものお世話ができる方が喜ばれるときもあります。特にお子さま連れの夫婦は、夫婦二人の時間が欲しいと思われている方も多いので、子どもを代わりにみてあげると喜ばれたこともありました。

自己研鑽の方法

ーー 自己研鑽として、これまでどんなことをやられていましたか

ガイドを始めたばかりの頃、団体ツアーを引き受けていた時は、とにかく行程をシミュレーションして(時間の間隔や歩き方など)、どこで何を話すかひたすら暗記していました。
FITやウォーキングツアーを始めた頃から、行程と知識の丸暗記だったところから、お客様をどうやって楽しませるかというところに、意識が変わっていきました。自分でまず日本語で経験して、アウトプットはどうしていこうかなと考えていくようになりました。コロナ前までは忙しくて、新しく行く場所は、知識を丸暗記で何とかしていた部分もありました。しかし、コロナ禍で時間ができてからは、より深く日本語で勉強して、100%理解してから、相手の求める知識を相手に合わせて出せるように説明したいという風に変わっていきました。

ーー 基礎を固める時期は大事で、それを経てからようやく出来るようになることですけど、難しいですよね

10年間ガイドをやっていて、やっとですね。どうしても一方通行な案内になりがちですが、コミュニケーションにフォーカスしたノットワールドのウォーキングツアーでは、かなり鍛えてもらいました。

ーー コロナ禍の現在、大学に通われていると聞きました

京都芸術大学の通信課程3年に編入し、芸術史や、学芸員課程の勉強をしています。2020年にフランス人向けの美術館ツアーを複数回催行する予定でしたが、うわべだけの知識では物足りなさを感じていました。コロナでキャンセルにはなりましたが、大学では西洋と東洋の美術史を体系的に学び、それぞれの美術館や博物館の歴史やミッションといった全体像を把握する事が出来ました。ツアー中全部の知識は出さなくても、全体像を把握した上でガイディングすると、より自信が持てる気がします。

ーー 他に何か自己研鑽としてやられていることはありますか

コロナ前は、繁忙期以外の時にガイド仲間と集まって、お客様を連れていきたいレストランでランチをしたり、お店巡りをしていました。新しいお店は品ぞろえをチェックしたり、お店の人にご挨拶し、ツアー中スムーズにご案内できるようお店の入口や動線の確認をしました。あとは、他のガイドさんもやられているとは思いますが、よく一人で街歩きやギャラリー巡りをしています。

ーー そういったことが、富裕層のお客様をご案内する際に活きてくるということですね

例えばよくツアー中に突然コーヒーを飲みたいと言われることがあるので、リクエストされたときにすぐ行けるお店を提案できるようにしていました。

様々なシチュエーションに対応できる、気の利いたお店を探すようにしています。

また、女性はコスメを探す方も多いので、デパ地下巡りをして、どこに何があるかと、混み具合を確認したりもしていました。

ガイドのやりがい

ーー ガイドをやっている上で、やりがいは何ですか

ガイドのやりがいは、今コロナでガイドが出来なくなって改めて思いますが、お客様に喜んでもらうこと、異文化コミュニケーションが取れることです。

「あなたのおかげで楽しかった」と思ってもらえることや、ガイドとゲストを超えて通じ合える瞬間が嬉しいし、やりがいがあると思います。

今後目指したい姿

ーー 今後の目指したい姿を教えてください

日本を楽しんで頂きたいと思う気持ちは、どんなお客様でも一緒です。

自分で出来る、出来ないを決めずに、どんなお客様が来ても対応できるようになりたいと思っているので、足りないところを埋めていきたいです。
また、日本の美しい文化や芸術を発信し、世界中に日本のファンを増やしていきたいです。

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