なんとなく「LGBT」という言葉は知っていても、その意味をあまり理解していない、具体的に何を指すのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
最近では、従来の「LGBT」に「QIA」を加えた「LGBTQIA+」という言葉も使われており、より性的マイノリティの多様性が認められるようになっています。
この記事では、LGBTQIA+とは何かを簡単に説明し、さらに理解を深めたい方のために、おすすめの本(日本語&英語)をご紹介します。
LGBTQIA+の頭文字が表すもの
LGBTQIA+とは、性的マイノリティ(少数派)を表す言葉です。
LGBTは、性的指向を表すLesbian(レスビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、性自認のTransgender(トランスジェンダー)の頭文字を取っており、
残りのQIAは、Queer/Questioning(クィア/クエスチョニング)、Intersex(インターセックス※現在ではDSDsと呼ばれ、後ほど詳しく説明します)、Asexual(アセクシュアル)の頭文字を取っています。
セクシュアリティは多様化しており、上記の頭文字に入っていない、または表す言葉がまだない性的マイノリティもいることから、多くの場合最後に「+(プラス)」が付けられます。
LGBTQIA+とは?
多様なセクシュアリティ、LGBTQIA+を理解するためには、まずセクシュアリティを決める4つの要素である「身体的性」「性的指向」「性自認」「性表現」を理解する必要があります。
身体的性(Sex)とは、身体的特徴、構造を元に出生時に割り当てられる性のこと。
性的指向(Gender Orientation)とは、どの性別を恋愛対象としているかを示し、
性自認(Gender Identity)とは、自分の性をどのように認識しているかを示します。
性表現(Gender Expression)とは、見た目や言動で表す性のことで、(典型的な)女性/男性らしくふるまうというものです。
たとえば、女装家のゲイの人は、身体的性・性自認が男性、性的指向が同性愛、性表現が女性ということになります。
この4つの要素が多様に組み合わさって人の性、セクシュアリティが決まります。
セクシュアリティはグラデーションのようなものと例えられることがあるように、必ずしもひとことで男性、女性と区別できるものではありません。
LGBTQIA+それぞれが表すセクシュアリティに関して、覚えておきたい言葉を以下にまとめました。
セクシュアリティを表す言葉は、LGBTQIA以外にも存在します。
■性的指向
レズビアン・・・女性同士の同性愛者
ゲイ・・・男性同士の同性愛者
バイセクシュアル・・・性的指向が男性にも女性にも向いている両性愛者
アセクシュアル・・・どの性別も性的対象としない無性愛者
パンセクシュアル・・・相手の性自認に関係なく、すべての人を対象とする全性愛者
※パンセクシュアルとバイセクシュアルの違いは、Xジェンダーなど、性別の枠にとらわれない人も対象とする点です
ヘテロセクシュアル・・・異性愛者
■性自認
トランスジェンダー・・・身体の性と心の性が一致しない人/身体の性ではなく、心の性で生きていきたい人
クィア/クエスチョニング・・・クィアは、LGBTに含まれない性的マイノリティも包括する言葉で、
クエスチョニングは、自分の性自認や性的指向にまだ迷っている人、あえて選択しない人を指します
Xジェンダー・・・性自認が男性にも女性にも当てはまらないという人
■性表現
ノンバイナリー・・・性自認と性表現が性別の枠にとらわれない人
ジェンダーフルイド・・・性表現がその時々で流動的に変わる人
■DSDs「体の性のさまざまな発達/性分化疾患」について
LGBTQIA+のIについて、記事中に「インターセックス(生物学的な男女の特徴が混在する状態)」としていましたが訂正いたします。
現在では「インターセックス」という用語ではなく、「DSDs:体の性の様々な発達」と呼ばれています。
現在でも、一般社会だけでなく、性的マイノリティのコミュニティにおいても、DSDsに対する誤解や偏見が大きく、「男でも女でもない」「中間」「男女両方の特徴が混在」などの誤解・偏見が根強い状況です。
DSDsとは「体の性の発達が、一般的な発達とは生まれつき一部異なる女性・男性の体の状態」、「男性にも女性にも,それぞれさまざまな体のつくりがある」ということで、LGBTQAなど性的マイノリティや、性自認・性的指向の多様性とは異なるものだということも分かっています。
DSDs患者の多くの方は、切実に自分をただの男性・⼥性と⾒てほしいと思っています。DSDsの当事者にとっては、「男でも女でもない」「男女中間」「男女に分けられない例」「男女両方の特徴を持つ」と言われることが一番傷つくことになるのです。
DSDsは生殖器という極めて私的で繊細な領域に関わり、とてもプライベートでセンシティブな領域に関わる話です。誤った認識はDSDsの当事者やそのご家族を深く傷つける恐れがあるため,正確な知識の普及が必要とされています。
ジェンダー代名詞(Gender Pronouns)
SNSのプロフィール欄などで、「she/her/hers」「he/him/his」「they/them/their」という表記を見たことがありませんか?
米国では、代名詞を自分の性自認・性表現と一致させるために、ジェンダー代名詞を使用する人が増えています。
たとえば身体的性は男性で、性自認は女性なのに、他人から「he」と呼ばれたら、どうでしょうか。
自分のセクシュアリティについて悩んだことがない人にとっては些細な事のように思えますが、当人にとっては違和感や不快感を感じることになります。
最近欧米で出版された小説や本、雑誌の中にはすでにジェンダー代名詞の使用が見られ、今後当たり前になっていくのかもしれません。
そこで、初めて会う人と英語で話すときは、お互いが安心して話せるように、”What are your pronouns?(あなたの代名詞は何ですか?)”と聞いてみましょう。
その後の会話がずっとしやすくなりますよ。
多様な性的マイノリティについて学べる本
LGBTQIA+や、セクシュアリティについて学べる本はたくさんあります。
まだまだ日本での認知度は低いですが、ぜひ一度気になったものを手に取ってみてください。
マンガでわかるLGBTQ+
セクシュアリティやジェンダー、多様性などについて発信するWebメディア、パレットークから出版された本です。予備知識ゼロで、はじめてLGBTQ+に関する本を読むという人でも、漫画で分かりやすい内容になっています。
当事者の様々な体験談を通してより身近に感じられ、今までセクシュアリティについて考えてこなかった人でも、周りへの言動に気を付けるきっかけや気づきとなりうる一冊です。
愛と差別と友情とLGBTQ+: 言葉で闘うアメリカの記録と内在する私たちの正体
在米25年のジャーナリストによる日本とアメリカのLGBTQ+をめぐる同時代史。性的マイノリティである著者自身の経験を交えながら鋭い視点で展開され、人気映画や歌手などを絡めながら、日本とアメリカの社会構造の違いや、LGBTQ+に関する様々な問題の本質(多くの問題はマジョリティ側にある)を理解する助けとなる一冊です。
難解な内容も読みやすく書かれています。差別や区別をする/されることなく、誰もが平等に、心地よく生きる未来をつくるために何ができるのか、考えるきっかけを与えてくれる良書です。
Ace: What Asexuality Reveals About Desire, Society, and the Meaning of Sex
こちらは英語で書かれた本ですが、世間ではまだまだ言葉自体知られていない無性愛者、「アセクシュアル」をテーマに書かれています。著者自身が自分のセクシュアリティを見出すまでの道のり、様々な人の体験談などを通して、当たり前ですが、一口にアセクシュアルといっても、人それぞれ違うこと(マジョリティを占めるヘテロセクシュアル・異性愛者もそうであるように)、また、社会がつくった性的関係や恋愛に対する偏った「普通」のイメージへの違和感に気が付く、そんな一冊です。
On Earth We’re Briefly Gorgeous: A Novel
アメリカ在住、ベトナムをルーツに持つ著者による、字が読めない母へ宛てた手紙。
筆者の幼少期から20代後半までの自伝的でもあり、性的マイノリティかつアジア人であることに起因するアメリカで生きていく苦難と、筆者自身の時に残酷な経験が、美しい文章にのって綴られています。移民、人種、貧困、セクシュアリティをめぐる差別など、様々なアメリカの社会問題を浮き彫りにしながら、世界を見る新たな視点を与えてくれる一冊です。
言葉を生み出すこと、知ることは、インクルーシブな社会の実現への一歩です。
数多くの海外からのお客様をご案内する通訳案内士(ガイド)の皆さんにとっても、多様なセクシュアリティについて知っておくことは重要です。
この記事がLGBTQIA+について理解を深める一助となり、考えるきっかけとなれば幸いです。
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