外国人に教えたい!日本のお酒シリーズ第四弾~日本ワイン編~

外国人に教えたい日本のお酒シリーズ第4弾ワイン編 通訳ガイドブログ

30年以上に渡り、国内外のあらゆるお酒に関わる仕事をしてきたJWG現役通訳ガイド・岸原さんをゲストライターにお迎えし、外国人に教えてあげたい、日本の様々なお酒のいろはをお届けするシリーズです。

【ガイドライター】

岸原文顕(きしはら ふみあき)
ソムリエ(日本ソムリエ協会)、H.B.Aカクテルアドバイザー、全国通訳案内士
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30年以上にわたり、国内外の様々な酒類のマーケティングや商品開発に従事。世界3大ビールブランドや洋酒類のブランドマネージャーを歴任。

居住したカナダ、香港、上海を拠点にして世界各地の飲食文化に触れ、2017年から京都に居住し、日本各地や世界に向けてクラフトビールの魅力を発信しつつ、未来型のビール文化の創造に取り組む。

現在は、グローバルマーケティング・リサーチの仕事を通じてNIPPONの素晴らしいブランドの海外展開に挑戦中。

その他のシリーズはこちらから。

【日本ワインについての基本知識】

「日本ワイン」基礎知識

皆さんは、日本ワインについてどれくらい知識がありますか?
クラフトビール日本酒に比べると少ない方も多いのではないでしょうか。
はじめに、基本知識として日本ワインについて一緒に学んでいきましょう。

国産ワインの誕生

国産ワインが日本で初めて作られたのは1870年頃、2人の男性が甲府でワイン造りを始めたと言われています。その後1877年、山梨に「大日本山梨葡萄酒造会社」(メルシャンの前進)が設立されました。
日本のワイン造りは、なんと140年もの歴史があるのです。

「日本ワイン」の定義とは

2015年、国税庁は国産ブドウだけを使用して国内で生産されたワインを「日本ワイン」と定めました。100%日本で造られたワインのことを指します。

ラベルに「日本ワイン」の表記が必ずありますので、探してみてください。

日本にあるワイナリーの数は

その数はなんと331を数え、北は北海道から南は沖縄まで。(2019年3月時点)
やはり1番多いのは山梨県の85件、次いで長野県の38件です。
ワイナリーの数は、年々さらに加速度的に増えています。

【参考】国税庁:日本ワイン産地マップ

【日本ワイン成功の背景】

「日本ワイン」ぶどう

知る人ぞ知るマニアの秘密的存在だった「日本ワイン」は、現在、世界で評価され人気沸騰中です。なぜそのようになったのか、その理由を探っていきましょう。

原料、まずはじめにブドウありき

ワインの原料は100%ブドウだけ、水の一滴すら加えません。美味しいワインは、生まれた土地の気候・風土・農家によって育まれるブドウの個性そのものが味わえます。何よりもブドウの良さが大切。そう、ワインは農産物なのです。

世界中のワイン名産地には固有のブドウ品種があります。
外国人から、「日本固有のブドウ品種は?そのワインが飲みたい!」と言われたら、胸を張って応えましょう。

白ワインなら「甲州」、赤ワインなら「マスカット・べーリーA」が日本の二大品種です。この2つの品種が日本で栽培されるワイン用ブドウの30%を占めています。(令和2年国税庁資料より)

「甲州」は、おだやかな柑橘系の香りと繊細な酸味・果実味のワインになり、また「マスカット・べーリーA」からは、ほのかに甘いキャンディーのような香りと軽やかなボディ、樽熟成すると上品で複雑味のあるワインが生まれます。

テロワール、日本独自の気候・風土

ブドウは、育つ土壌と気候条件によってその個性が際立ちます。
北海道から九州・沖縄まで日本は南北に長い様々な気候風土の集合体です。それゆえ、フランス原産の同じ品種のブドウを育ててもフランスとアメリカと日本では大きく異なるように、同じ日本国内でも地域によって風味が異なります。

例えば、各地でつくられる日本産の「メルロー」は非常にエレガントで繊細だと世界で絶賛されています。 

※テロワール=ブドウ畑を取り巻く自然環境要因のこと

つくり手、「どのワインにも良いところはある。」

日本のワインを世界レベルにまで引き上げることに貢献した“現代・日本ワインの父”と称される日本人がいました。自身が培った醸造技術を多くのワイナリーに公開し、欧州系品種の栽培を各地で広め、食事と合わせるワインの楽しみ方を推奨しました。

麻井宇介(本名は浅井昭吾)というペンネームで知られ、その功績は「ウスケボーイズ」という映画になったほど。「どのワインにも良いところはある!」と、次世代の生産者に語りかけながら、美味しいワインづくりに賭ける情熱に溢れる姿を見ていると、ワインが愛おしくなります。ぜひ御覧くださいね。

ペアリング、和食に寄りそう味わい

日本ワインはアルコール度が低くやや軽めですが、世界の食もライト化したためトレンドにフィットしています。また、繊細で滋味深い味わい、複雑なハーモニーが日本ワインの魅力。それは世界が絶賛する和食の世界観に通じます。

甲州

日本人のソウルワイン。しみじみとしたうま味は、和食のベースになる出汁の旨味としっくりまとまります。冷やっこや、かぼすを絞った刺身、これからの季節は若竹煮のような筍料理ともおすすめです。

マスカット・べーリーA

優しい脂の旨みがあるローストポークに粗挽き胡椒を振ったような肉料理はもちろん、香ばしく焼き上げた鰆の西京焼きなど魚料理も旨味が引き立ちます。

メルロー

柔らかく繊細な旨味の地鶏焼きや国産牛のローストビーフなどと合わせて、口の中でしなやかに柔らかく広がるハーモニーを楽しみましょう。

フランス原産品種では、他にも白は「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」、赤は上述の「メルロー」「カベルネ・ソーヴィニヨン」などおいしいワインがたくさんあります。訪れたレストランのソムリエや、スタッフにおすすめのペアリングを聞いてみるといいですね。

【日本ワインの未来】

「日本ワイン」の未来

NIPPONは世界の銘醸地に

明治時代に産声を上げた日本のワイン造りは、140年以上の時を経ました。農家が日本の各地域の自然と共生しながら新たな栽培方法を取り入れ、生産者は醸造技術の革新に挑戦してきました。

次世代の産業関係者が、ワインの世界に新たな地平を切り拓いています。真のグローバルとは、他にはないローカルの個性で勝負し賞賛されること。日本中のワイナリーがそれぞれ個性的なワインを産み出しながら互いを高め合ってていくことで、NIPPONが世界の銘醸地として揺るぎない評価を受けるでしょう。

ワインツーリズムNIPPON

世界の銘醸地NIPPONには、これから世界中のワイン好きが憧れ来訪することになります。その際に大切なのは、生産者と飲み手をつなぎながら情報発信地となる場所の存在です。

まさにその場所こそがブドウが育まれ、「日本ワイン」が醸される地域です。各国からの来訪者に緑あふれるブドウ畑を眺め、ワイナリーを巡り、生産者と語り、宿泊してもらい、ワイン産地としての文化を語り合う。

難しいうんちくを並べたり、高いワインを飲むことが文化ではありません。自分が育ったこの日本の土地で、同じ日本人がつくった手作りの「あたたかみ」。
地元の人々が地元のワインを日常的に飲みながら創るコミュニティ、次世代につないでいく誇り。それらの全てを体感してもらえると素晴らしいですね。

寄稿にあたり、日本・フランスでワイン産業に関わる方々からも、「日本ワイン」の魅力をお聞きすると、「日本ワイン」への深い愛情に共感しました。

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