【通訳案内士のためのケーススタディ】少人数グループツアーでの集合時のゲスト対応

通訳ガイドスキルアップ

河野(@yukono1017)による街人道コラムが不定期更新を続けていますが、
新しい不定期コンテンツをスタートいたします。

街人道ケーススタディです。

通訳案内士の方はいろいろな研修に参加され、多くの知識を蓄積していきますが、
実際の現場では、イレギュラーなことの連続です。

考えながら動けるようにならないと、理想の通訳ガイドは実現しません。
なので、「こういう場合どうする?」を具体的事例に基づいて色々考えることで、考える癖をつけ現場でのゲスト対応向上を目指します。

では、早速行ってみましょう。

ケース#001:グループツアーでの集合時のゲスト対応

あなたは、9:00集合 9:15出発のツアーの通訳ガイドです。ゲストは2組4名(各2名ずつ)です。
事前に集合場所の下見もしており、少し離れたところに座って待つことのできる屋内待合所があることも確認済みです。

ツアー当日、時間に余裕をもって、8:50に集合場所についたところ、既にJohnさんグループ2名は、集合場所で待っていました。
しかし、9:00を過ぎても、もう一組のゲストはまだ来ず、9:15になっても、やってきません。

さて、あなたなら、8:50に集合場所についてから、どのように時間を過ごしますか?

昨今、団体旅行から個人旅行への流れが加速しています。
それとともに、これまで多かった40人バスでのツアーに加え、MAX10名ちょっとの少人数のグループツアーも増えてきています。

プライベートツアーであれば、ゲストに合わせた行動ができますが、複数組がいると、そううまくも行かないところ。

あなたならどうしますか??

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(対応例と解説)ケース#001:グループツアーでの集合時のゲスト対応

(対応例⓵)

集合時間・出発時間まで、まだ時間があるので、「あっちに屋内待合所があって座れるのでそっち行って待ってて」と屋内待合所を紹介した。
9:00になってももう1組のゲストは来ず、9:15になっても来なかった。
次の信号が変わったらくるのでは、と思い、もう一本待ったが来なかったので、9:20手前にエージェントに連絡を入れ、9:20過ぎにゲストが待っててくれている屋内待合所へと向かった。
ゲストに「待っていてくれてありがとう!もう1組のゲストが来ないけど9:15になったので始めましょう」と言い、ゲストは1組だったこともあり、歩きながら自己紹介やツアーの概要説明等を行った。

(対応例②)

ゲストに、先に来て待っていてくれていることのお礼を言い、簡単に自己紹介をした。
集合時間・出発時間までは時間があったので、Johnさんと雑談をしながら過ごした。
9:00になってもゲストは来ないので、Johnさんに今日のツアーの概要等の説明を始めた。今日の全体像とルートの説明をしたところ、ショッピングに興味を持っているようで、その話ではずんだ。遅れて9:10頃に、一言断りを入れたうえで、エージェントに連絡を入れた。
9:15になってもゲストは来ず、もう既にツアーの概要等の説明も終えているので、「9:15なので始めましょう!」といい、出発した。

(対応例③)

ゲストに、先に来て待っていてくれていることのお礼を言い、簡単に自己紹介をした。
集合時間・出発時間までは時間があったので、Johnさんが「どこから来たか」「日本にどれくらいいるのか」「日本でどこに行ったのか」「これまでどこか一番お気に入りだったか」等、他愛もない雑談をしながら過ごした。
そうする中で、日本は初めてでまだほとんど何も知らないこと、歴史系の話にはそれほど興味はないが、建築・食には興味がありそうなことが見えてきた。
9:00になってもゲストは来ないので、Johnさんに一言断りを入れたうえで、エージェントに連絡を入れた。
その後引き続き、「待ってくれてありがとう!9:15にはスタートするので!」とゲストに伝え、雑談をして過ごした。
9:15になってもゲストは来ないので、エージェントに連絡を入れたうえで、「スタートの9:15なので始めましょう!」といい、その場で改めての自己紹介とツアーの概要説明等を始めた。

(対応例④)

その日は、とても肌寒く小雨が降っていたので、8:50にゲストと会った際に、2-3分立ち話をした後、寒そうなゲストの様子をみて屋内待合所を紹介した。
その際に、9:15には出発する旨を告げ、もう一組のゲストが来たら、待合所に向かうことを伝えた。
9:00を過ぎ、ゲストが来ないので、ゲストに連絡をしてもらうようエージェントに連絡をいれて、引き続き集合場所で待った。
9:15になってもゲストが来なかったため、エージェントに再度連絡を入れたうえで、待合所にいるゲストのもとへと向かった。
ゲストと落ち合った後集合場所に戻り、「時間になったので始めましょう」と、その場で自己紹介やツアーの全体の説明等を行った。
5分ほどゲストと話していると、遅れているゲストがやってきて、無事合流することができた。

(解説)
さて、あなたならどのガイドさんに、ガイドしてもらいたいと思いますか?

対応例⓵②のようなケースは、実際によく見かけます。
ただ、9:15までにゲストが来てくれた場合はまだいいのですが、来なかったケースなどでは後手後手になってしまいます。

今回のケースでのポイントは2つあります。

  1. 全方位外交をする
  2. 時間を有効活用する

1.全方位外交をする

全方位とは何を言っているかというと、この場合、早く来たゲストと、時間に来ないゲストのことを指しています。

早く来たゲストは、当然、出発時間にはスタートしたいと思っています。
自分たちは時間通りに来たのに、なんで遅れてきたやつを待たなきゃいけないんだ、と思う人もいます。

一方、時間に来ないゲストはどう思っているでしょうか。
単に時間に緩い国の出身者もいます。あるいは、一本電車を乗り過ごしちゃって、急いでいるんだけど間に合わない人もいます。
中には、別の場所で待ちぼうけしているゲストもいますし、迷子になっているゲストもいます。
「5分くらい遅れても待っててよ」そう思っている人も一定数います。
皆さんの生活の中でも、役所とかが時間通りに窓口しめて「いやいやちょっとくらいいいじゃん」って思った人は結構いるんじゃないでしょうか。

時間通りに出発して、5分後に行ったら出た後だった。

これだと、早く来たゲストは当然と思うかもしれませんが、
遅れてきたゲストは「たった5分で置いてかれた!(怒)」となるケースがあります。

運よく合流できたりしたときに雰囲気があまりよくない。
こうなってしまったら、早く来たゲストにも迷惑がかかるケースがあります。

なので、両者に配慮した対応=全方位外交が必要です。

その一つが、時間になった際に、
早く来たゲストには「さぁ始めましょう」と言いながらその場で説明をはじめ、
遅れているゲストからすると「待っている」状態を作ることです。

また来ていないゲストに、何とか連絡を取り、早めに合流できる努力をするのも大事な行動です。

中には、遅れてきたゲストに対し、
「あなたが遅れたからチーム全体に迷惑をかけた」と遅刻を責めている通訳ガイドを見かけますが、論外です。

みんなが楽しめる雰囲気をつくりましょう。

2.時間を有効活用する

もう1点大事なポイントが、時間の有効活用です。

ゲストはお金を払ってツアーに参加しています。
早く来たゲストにとっても旅行中の時間は貴重な時間です。

「あっちで待っていてよ」と待っている時間(対応例⓵)にも、
本来ならもっと楽しんでもらうことができるはずです。

また、先にツアーの概要を1組に説明してしまった場合(対応例②)、
遅れてきたゲストがきてから、再度同じ話をしなくてはなりません。
再度同じ話をしている時間は、最初に来たゲストからすれば、無駄な時間です。

加えて、ガイドをするうえで大事なことは、ゲストの興味関心を探ることです。(参照:街人道コラム15)
せっかく早く来てくれて、興味関心を探る時間が目の前にあるのに、
その機会みすみす捨ててしまうのは勿体無いです。(対応例⓵)

ただ、対応例④のように、外で待っているのがゲストにとって快適ではない場合もあります。
その場合、場合の状況に応じて、臨機応変な対応が求められるケースもあります。

Time is money

是非、時間を有効活用しましょう。
雑談で楽しませながら、相手の興味関心を探ることができれば、そのツアーの成功はぐっと近づきます。
遅れてきたゲストも楽しそうに話している輪に加われたらその時点で楽しい気持ちになるでしょう!

決まった正解等ありません。
ただ、ゲスト全員が楽しめるにはどうしたらいいか、常に考えて動きましょう。

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