通訳案内士と略される場合、国家資格である「全国通訳案内士」を指す場合が多いですが、皆さんは「地域通訳案内士」をご存知でしょうか。
今回は、日本各地に存在する「地域通訳案内士」についてご紹介いたします。
全国通訳案内士との違い
「全国通訳案内士」とは、観光庁主管の国家試験を通じてのみ取得できる国家資格です。
難関資格として知られる一方、取得後は日本国内場所を問わず国家資格保持者として通訳案内業を営むことができます。
「地域通訳案内士」は取得時に定められた範囲において、同様の職務を行う者のことです。
「全国通訳案内士」が大都市に偏っている現状を踏まえて制度が策定されました。
試験は関係法令に基づいて各自治体が独自に行っており、取得に際して求められる語学力、知識共に国家試験より基準は低く設定されています。
改正通訳案内士法 施行以前
2018年1月4日、改正通訳案内士法の施行により全国通訳案内士資格が「業務独占」から「名称独占」へと変更されました。
同時に、複数の制度により誕生していた「地域限定特例通訳案内士」など、多数の名称が「地域通訳案内士」へと統一されています。
根拠となる法令が分かれていたため、複雑であった状況が改善したといえるでしょう。
現在でも毎年、独自の「地域通訳案内士」制度を創設する自治体が増えており、取得を目指す際、事前の情報収集は必須といえます。
※下記ご紹介するのは2020年現在の「地域通訳案内士」、各自治体ごとの登録人数と取得までの流れです。変更される場合もあるのでご注意ください。観光庁参照。
都道府県別:登録状況と取得方法
令和3年4月現在、約40地域に導入され、育成人数は3,582とされています
下記は一部抜粋した情報ですが、詳細・最新情報はは各都道府県・地域通訳案内士運営事業者のHPをご覧ください
*北海道・東北地方*
北海道
・北海道地域通訳案内士 87名
・札幌地域通訳案内士 124名
共に改正法施行後の募集はありません。
【募集言語 *2015年度】
英語・中国語・韓国語・タイ語 ※札幌地域通訳案内士
【募集用件】
TOEIC750点以上、または実用英語技能検定2級以上 ※札幌地域通訳案内士
英語以外の言語については、対象言語の実用英語技能検定1級相当のスピーキングスキルに達していること。
参照:北海道庁、札幌市
岩手県
・岩手県地域通訳案内士 35名
・陸前高田市通訳案内士 4名
現在共に新規の募集はありません。
参照:岩手県観光ポータルサイト、一般社団法人 マルゴト陸前高田
福島県
・福島県地域通訳案内士 225名
【募集言語 *2019年度】
英語・ベトナム語・タイ語
【募集用件】
TOEIC750点・実用ベトナム語検定2級・実用タイ語検定準2級
研修に参加後、口述試験受験。合格後地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:ふくしまの旅、ツーリストエキスパーツ
*関東・中部地方*
栃木県
・栃木県地域通訳案内士 30名
現在新規の募集はありません。
参照:とちぎ旅ネット
東京都
・東京都地域通訳案内士 149名
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC600点、都内勤務のタクシーまたはハイヤーのドライバーのみ受験可
研修に参加後、認定試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:東京都産業労働局
新潟県
・佐渡市地域通訳案内士 20名
現在新規の募集はありません。
【募集言語 *2016年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC730点程度、または実用英語技能検定準1級
参照:佐渡市
富山県
・富山県地域通訳案内士 22名
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC730点以上、または実用英語技能検定準1級
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:富山県、とやま観光ナビ
石川県
・金沢市地域通訳案内士 84名
【募集言語 *2018年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC730点以上、または実用英語技能検定準1級
参照:マチパブ
長野県
・長野県地域通訳案内士 10名
現在新規の募集はありません。
【募集言語 *2016年度】
英語・中国語・韓国語
参照:長野県、プレスリリース
山梨県
・山梨県地域通訳案内士 169名
【募集言語 *2018年度】
英語・フランス語・中国語・韓国語・インドネシア語・ベトナム語
【募集用件】
TOEIC730点以上、実用フランス語技能検定2級以上、中国語技能検定2級以上
ハングル能力検定2級以上、インドネシア技能検定B級以上
実用ベトナム語検定2級以上
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:山梨県、富士の国やまなし
静岡県
岐阜県
・高山市地域通訳案内士 17名
・飛騨地域通訳案内士 74名
参照:高山市、飛騨市、HIDA REGIONAL GUIDE
*近畿・中国地方*
滋賀県
・高島市地域通訳案内士 13名
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC600点以上、または実用英語技能検定2級以上
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:高島市、高島地域雇用創造協議会
京都府
・京都市地域通訳案内士 256名
【募集言語 *2019年度】
英語・中国語・フランス語・スペイン語
【募集用件】
TOEIC730点以上または実用英語技能検定準1級以上、中国語検定2級以上
実用フランス語技能検定試験凖1級以上、スペイン語技能検定2級以上
書類審査通過後研修に参加、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:京都市、京都市観光協会
奈良県
・奈良県地域通訳案内士 100名
・飛鳥認定通訳ガイド 34名
【募集言語 *2018年度】
英語・フランス語 ※奈良県地域通訳案内士
【募集用件】
TOEIC750点以上、フランス語技能検定準1級以上 ※奈良県地域通訳案内士
参照:奈良県、飛鳥観光通訳ガイド協会
大阪府
・泉佐野市地域通訳案内士 100名
【募集言語 *2018年度】
英語・中国語・韓国語
【募集用件】
TOEIC730点以上、中国語検定2級以上、ハングル能力検定2級以上
研修に参加後、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:泉佐野市、泉佐野地域通訳案内士協会
和歌山県
・高野・熊野地域通訳案内士 232名
【募集言語 *2019年度】
英語・フランス語・スペイン語・中国語
【募集用件】
TOEIC750点以上または実用英語技能検定2級以上、実用フランス語技能検定試験2級以上
スペイン語技能検定3級以上、中国語検定2級以上
研修に参加後、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:和歌山県
鳥取県、島根県
・山陰地域通訳案内士 172名
・益田圏域地域通訳案内士 26名(鳥取県)
現在共に新規の募集はありません。
【募集言語 *2016年度】
英語・中国語・韓国語 ※山陰地域通訳案内士
【募集用件】
TOEIC730点以上、中国語検定2級以上、ハングル能力検定2級以上
参照:山陰インバウンド機構、マチパブ
広島県
・広島県地域通訳案内士 75名
【募集言語 *2019年度】
英語・中国語
【募集用件】
TOEIC730点以上または実用英語技能検定準1級以上、中国語検定2級以上
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:広島県
山口県
・山口ゆめ回廊地域通訳案内士: 54名
【募集言語 *2019年度】
英語・スペイン語・中国語・韓国語
【募集用件】
TOEIC730点以上または実用英語技能検定準1級以上、スペイン語技能検定2級以上
ハングル能力検定2級以上、中国語検定2級以上
書類審査通過後研修に参加、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:山口県国際交流協会、山口市
*四国・九州・沖縄地方*
香川県
・香川県地域通訳案内士 133名
【募集言語 *2019年度】
英語・中国語・韓国語
【募集用件】
TOEIC730点以上、中国語検定2級以上、ハングル能力検定2級以上
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:香川県
高知県
・高知県地域通訳案内士 32名
【募集言語 *2019年度】
英語・中国語・韓国語
【募集用件】
TOEIC730点以上、中国語検定2級以上、ハングル能力検定2級以上
研修に参加後、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:高知県
大分県
・城下町きつき地域通訳案内士 22名
・中津市地域通訳案内士 6名
・竹田市地域通訳案内士 9名
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC730点以上または実用英語技能検定2級以上
研修に参加後、効果測定を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:杵築市、中津市、竹田市
長崎県
・長崎県地域通訳案内士 43名
現在新規の募集はありません。
参照:長崎県
熊本県
・阿蘇地域通訳案内士 18名
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC600点以上または実用英語技能検定2級以上
研修に参加後、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:マイ広報誌、阿蘇ユネスコジオパーク
鹿児島県
・世界文化遺産地域通訳案内士 10名
・奄美群島地域通訳案内士 113名
世界文化遺産地域通訳案内士
【募集言語 *2019年度】
英語のみ
【募集用件】
TOEIC650点以上または実用英語技能検定2級以上
鹿児島大学大学院にて講義を受講、単位を取得した後地域通訳案内士として登録の流れとなります。
奄美群島地域通訳案内士
【募集言語 *2019年度】
英語・中国語・韓国語
【募集用件】
実用英語技能検定2級以上、中国語検定3級以上、韓国語能力検定4級以上
事前審査のち研修参加、修了試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:鹿児島県、株式会社チャイナゲートウェイ
九州7県共通
・九州アジア観光特区アイランドガイド 264名
【募集言語 *2019年度】
中国語・韓国語・タイ語
【募集用件】
中国語検定2級程度、ハングル能力検定2級程度、タイ語検定2級程度
研修に参加後、口述試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:九州観光推進機構、福岡県
沖縄県
・沖縄県地域通訳案内士 706名
【募集言語 *2018年度】
英語・中国語・韓国語
【募集用件】
実用英語技能検定準1級以上、中国語検定2級以上、韓国語能力検定5級以上
事前審査のち研修参加、修了試験を経て地域通訳案内士として登録の流れとなります。
参照:沖縄県
地域通訳案内士のこれから
「地域通訳案内士」資格は専門とする範囲が限られている分、活動する地域の歴史や土地柄など、深く精通していることが求められます。
また、世界遺産に特化した資格など、「全国通訳案内士」と比較して個性豊かともいえるでしょう。
これからはインバウンド業界の盛り上がりにともない、都市部だけではなく地方への観光客の流入も予想されます。
郷土への恩返しの意味も込めて、ぜひ取得を検討されてみてはいかがでしょうか。
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