通訳案内士/通訳ガイドのみなさんは、ゲストをご案内している最中にピンチに陥ったことはありますか?
「これは私だけの経験かも…」
「みんなはこんなときどうしているんだろう」
と不安になることも多いと思いですよね。しかし、他の方も同じ不安を抱えていると知った上で対処方を学べばきっと備えられます。
今回はそんなヒヤリとする状況を、ガイドの皆さんから寄せられた体験談を交えてご紹介します。
ピンチは避けられない

通訳案内士/通訳ガイドとして、当然ながらトラブルの発生は未然に防ぎたいものです。そのために、日頃から備えを怠るべからずと、意識されている方も多いのではないでしょうか。しかしゲストとの関わりの中で、想定外の事態が発生してしまうことも少なくありません。
防止することはもちろん大事ですが、起きてしまった事態に対処する力も必要です。最善の結果を導けるよう心がけていきましょう。
準備不足によるミス編

やはり通訳案内士/通訳ガイドの皆さんも人間、全てにおいて完璧にこなすことは難しいです。
ただしミスの後の対処次第で、最悪の結果を避けることは可能でしょう。
その1:道に迷った
・ルートを勘違いしてしまい、地下鉄の駅をいくつか乗り過ごしてしまった。
・高齢で長い距離を歩くのが困難な人をガイドしたとき、道に迷ってしまった。
対処としては、まず心よりの謝罪。それから周りの方に道を尋ねるなど臨機応変に対応する必要があります。「信頼関係を回復する」ことを念頭において行動をとれば、ゲストにもその思いは伝わるでしょう。
その2:情報伝達の不備
・新婚旅行のカップルと寿司レッスンへ行ったとき、奥様がベジタリアンであることの情報を知らされていなかった。
・40人ほどのバスツアーでしたが、確かに英語ツアーなのに英語を理解できる人がひとつのグループにつき、1人くらいしかいないツアーだった。
これらのケースは、エージェント側のミスであったといえるでしょう。
しかし、目の前のゲストを対応するのは自分。ゲストに対してできることを精一杯尽くし、ツアー終了後にエージェント側に連絡を。同じ事態の発生を未然に防げるように働きかけましょう。
その3:待ち合わせ時のトラブル
・ゲストと合流するのに時間がかかった。
・日帰りのバスツアーで人数確認を誤り、ゲストを置いたまま出発してしまった。
待ち合わせ時、初対面の場合は第一印象が決まるため、注意すべきといえます。
万が一ガイドが遅刻する可能性がでてきた場合は、エージェントやゲストへ速やかに連絡をしましょう。
真摯に謝罪の気持ちを伝えた上で、普段以上にゲストに楽んでもらえるツアーとなるよう、気持ちを切り替えてご案内を始めましょう。
ゲストを置いたまま出発してしまった方は、高速のインターンで降りて出発点まで戻りゲストをピックアップ。ゲストとエージェントに謝罪し、始末書を書いたそうです。
ハプニング編

想定外の事態は起こりうるものですが、冷静に対処することが何より大切です。
深刻なハプニングの発生時ほど、悪化させないよう適切に行動しましょう。
その1:怪我または体調不良
・富士山五合目で転倒し、お客様が出血。傷を圧迫しグループ全員で芦ノ湖まで降りて、他のお客様にはクルーズ船に乗ってもらい、湖畔のクリニックにお連れして無事に縫合してもらった。
・移動中、ゲストの体調が悪くなって歩けなくなった。途中下車し駅の救護室で安静にし、少し回復したところでタクシーでホテルへ。
怪我や体調不良の場合、素早い判断が求められます。そんな時こそ焦りは禁物です。
不安な気持ちを抱えたゲストに寄り添えるよう、落ち着いて最善の行動を考えましょう。
緊急時に対応できる備えをしておくと安心です。

その2:ゲストが迷子に
・ アメ横で、2名のお客様が消えた。
・箱根で船を降りたときに、ひとつのグループ数人を見失った。
初めて訪れた土地で、はぐれてしまうとお互いに不安でいっぱい。すぐにでもゲストを探しにいきたいところですが、他にもご案内中のゲストがいた場合は両者へのケアが重要です。体験された方は、必死に探し回ったとの回答が多かったです。
状況に応じて、エージェントへ連絡を取るのもよいでしょう。
ツアー開始時にはぐれた場合の待ち合わせ場所を決めておくと、安心ですね。
その3:落とし物と忘れ物
・ゲストがツアー中に忘れ物をし、解散場所の駅で気が付いた。
・ゲストがパスポート等入れたカバンを紛失した。
手元を離れたものが何であれ、ゲストにとっては大切なものです。ゲストがなんとしてでも探したい!というものであれば、一生懸命に探しましょう。
訪れた施設や飲食店へ連絡をとり、ツアーを中断して戻ることも提案しましょう。
もしすぐに見つからない場合は、郵送が可能なことを伝えることもできます。
その4:ゲストが楽しめていない
・ゲストが案内する行く先々気に入らなかった。
・浅草をご案内中、ゲストが浅草の雰囲気が気に入らず、「ここは混雑していて、うるさすぎる」と機嫌が悪くなられた。
ご案内をして初めて、ゲストの好みを知る場面も多いのではないでしょうか。
もし楽しんでいない様子であれば、思い切って代替案を提案してみるのもいいかもしれません。
他の方とは異なる場所が好みかもしれないと考えて、柔軟に対応することが大切です。
ちなみに上記のガイドさんは、隅田川のクルーズ船にご案内したり別場所を提案してなんとか乗り切られたそうです。
その5:急な変更
・ホテルミート時点での訪問先の全面変更依頼。
・新宿のフォトスポットツアーだったが、当日、ゲストが自分は建築家なので東京の建物を見たいと要望した。
行程については、可能な限りゲストと事前に打ち合わせをしておくことが望ましいですが、当日の変更はかなりの通訳案内士/通訳ガイドさんが経験されているようです。
このような場合、ガイドとしての力量が試されている気がしますよね。
普段から情報収集を怠らず引き出しを多めにもっておきましょう。
その6:店舗が休業中など、不測の事態
・普通の家族旅行のはずが、朝ミートしたらお子さんが車椅子だった。
・アート好きのゲストで、旅行会社から指定の画廊にいくとどれも閉まっていた。
画廊が閉まっていたケースでは、事前に念のため声かけをしていた他の画廊に伺うことで事なきを得たそうです。
車椅子の対応は駅員さんをはじめ、周りの方の協力を積極的に仰いで無事ツアーを催行し終えたそうです。
2つのケースともに、事前の備えと対応力が活きた結果といえます。想定外を減らして想定内を増やせるよう、普段から意識できるといいですね。
番外編
さまざまなピンチを経験するガイド業ですが、その中にはあっと驚くようなものもあります。
・政治的な意見を求められた。
・ゲストにキスを迫られた。(男性ガイド)
など、対応がとても難しいケースもあります。
ガイド同士でノウハウを共有していくことで、各々の成長に繋げていけたら素敵ですね。
ピンチをチャンスへ

「人事を尽くして天命を待つ」とは有名なことわざですが、ガイドとしての心構えにも通じるものがあるのではないでしょうか。きちんと備えておけば、もしものことが起きようとも取り乱さずにいられるでしょう。
また、問題が発生したツアーほどゲストの記憶にはよく残るものです。
(もちろん、ガイドの皆さんの記憶にも。)
裏をかえせば好印象も残るということで、ピンチもチャンスへと変えていきましょう!


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