外国人に教えたい!日本のお酒シリーズ第八弾~「浄酎」(ジョウチュウ)編~

通訳ガイドスキルアップ

                        

30年以上に渡り、国内外のあらゆるお酒に関わる仕事をしてきたJWG現役通訳ガイド・岸原さんをゲストライターにお迎えし、外国人に教えてあげたい、日本の様々なお酒のいろはをお届けするシリーズです。シリーズの他の記事はコチラからお読みいただけます。

【ガイドライター】

岸原文顕(きしはら ふみあき)
ソムリエ(日本ソムリエ協会)、H.B.Aカクテルアドバイザー、全国通訳案内士
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30年以上にわたり、国内外の様々な酒類のマーケティングや商品開発に従事。世界3大ビールブランドや洋酒類のブランドマネージャーを歴任。

居住したカナダ、香港、上海を拠点にして世界各地の飲食文化に触れ、2017年から京都に居住し、日本各地や世界に向けてクラフトビールの魅力を発信しつつ、未来型のビール文化の創造に取り組む。

現在は、グローバルマーケティング・リサーチの仕事を通じてNIPPONの素晴らしいブランドの海外展開に挑戦中。

これまで、誇るべき日本の酒造り文化について、ビール、日本酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、泡盛、ジンと7回に分けて紹介してきました。今回は新たな発想で生まれたお酒「浄酎」(ジョウチュウ、Jo-Chu)についての取材記事をお届けします。

えっ、何?初めて聞くお酒だなあと思われたあなた、奥深い世界を覗いてみましょう!

1.新発想の酒「浄酎」(ジョウチュウ)は、「第三の和酒」

浄酎(ジョウチュウ)は、選び抜かれた純米酒を「浄溜」して造るこれまでにない、全く新しいお酒。40度以下の低温で蒸溜する「低温浄溜」という独自の技術で、日本酒由来の豊かな香りと風味をそのまま凝縮しています。
すなわち、日本酒、焼酎に次ぐ贅を尽くして造られる「第三の和酒」です。
さらにこのアルコール度数41度の浄酎を、瀬戸内育ちのオーガニックレモンで香りづけし木樽で熟成させると、時を経るほどにレモンと溶け合いウイスキーのように変化します。その名も「琥珀浄酎」、世界唯一のお酒の誕生です。

2.広島瀬戸内の離島から、世界へ!

今回、造り手に会ってその魅力を探るために、瀬戸内の離島に行きました。

構想&開発者は、三宅紘一郎さん。私は、12年前に中国・上海で初めて会いました。その後の数年日本酒を世界に広める挑戦を続ける中で、品質が劣化しやすい日本酒は輸出に不向きと痛感し、新たな酒造りを志して起業。

Photo by Fumiaki Kishihara
人口21人の離島、三角(みかど)島が本拠地。この地に巡り会ったことから、レモンを自然栽培。

3.日本酒の酒蔵を守りたい

古来から日本酒は人と神々をつなぐ日本文化の象徴です。今や世界各国で和食とともに「SAKE」として人気上昇中ですが、母国日本では消費量はピーク時の1/3以下。各地の酒蔵の数も激減しています。起業した理由は、日本各地の街の文化そのものである酒蔵を守るため。日本酒本来の繊細な香りとふくよかな味わいという魅力を正しく世界に広めていくことで、豊かな日本酒文化を未来に引き継ぐことを目指しています。

そんな広島発ベンチャー「ナオライ」の名前は、祭りの後に御神酒を飲み交わす行為「直会」が由来だそう。しっくりきますね。

原料米は有機農業を営む農家に依頼し、酒造りは提携する県内四つの酒蔵に精米90%で純米酒を委託。有機栽培した稲には菌が増え、酵母との相互作用で酒は一層うまくなるそうです。その酒を「浄溜」するのだから美味しくないはずがない。着実にファンが増え、世界的コンテストでの受賞を受け輸出も始まっています。

三宅さんは、広島から始まったこの連携モデルを全国各地に広めてそれぞれの地域の特色を掛け合わせることで、新たな「浄酎」を生みたいと語ります。

4.「浄酎」名前に込めた想いと、その独特の佇まい

Photo by Fumiaki Kishihara 
ナオライが本拠地を置く久比・三角島にある、まめなが運営する「Bar邂逅」

本来の香味を活かし切る低温蒸留の工程を神道の「浄化」と重ね合わせ、日本人に馴染みのある蒸留酒の「焼酎(しょうちゅう)」の音感を残して「浄酎(じょうちゅう)」と命名。 “Purified Spirit”という、全く新しいカテゴリーの酒として世界展開を目指しています。

ボトルデザインも独特の佇まい。びんの形は、浄化されたピュアなアルコールの水滴が落ちる瞬間を表現していて、ネックには神道の祈りの本質を表現するモチーフとして「紙垂(しで)」をあしらっています。一度見たら忘れられませんね。

5.「くらしを自分たちの手にとりもどす」コミュニティを創る

さらに三宅さんは、三角島への渡り口にある、大崎下島の久比という集落で仲間と社団法人「まめな」を立ち上げ。空き家を改装し、宿やカフェ、訪問介護業など事業が広がり、価値観に共感して移住して来る若者が増えています。

Photo by Fumiaki Kishihara
大崎下島のレモン畑と、400人が暮らす久比の集落。

6.造り手の想いはつながる、NIPPONの酒文化の未来

今回の瀬戸内離島への旅のもうひとつの目的は、酒造りに関わる私の大切な仲間のひとり小元俊祐さんを三宅さんに紹介することでした。

小元さんは現在、仲間3人で、日本の西の果て五島列島・福江島の半泊という小さな村に、蒸溜所をつくっています。夢は、世界に誇れる「風景のアロマ」に満ちたクラフトジンで、この世界のどこかにいる「だれか」を幸せにすること。

夢や想いは同じ!NIPPONの酒文化の未来について、時間を忘れて語り合いました。

Photo by Fumiaki Kishihara
小元俊祐さん(左)と、三宅紘一郎さん(右)。廃屋だった病院を改装した、コミュニティ施設「まめな食堂」にて

今回は、新しい酒文化が産まれている現場からの情報をお届けしました。

今後も、酒造りの現場や原料栽培地を取材し、皆様に記事をお届けします。お楽しみに!

~付録~

■ JO-CHU Official Site 公式サイト:
https://jo-chu.com/

■ ナオライ 公式サイト 

Naorai Inc.
今日これまでのナオライの歴史は、年々縮小する日本酒業界という立場で、私たちにしかできない、だからこそ私たちがやりたいこと...

■一般社団法人まめな

一般社団法人まめな – くらしを、自分たちの手に取り戻す

■五島つばき蒸溜所  (建設中、2022年12月開業予定)

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覚えておくと便利な、お酒の英単語!

・醸造酒(日本酒、ビール、ワインなど):
fermented liquor・・・各種の原料を酵母で発酵させたお酒

・蒸溜酒(焼酎、泡盛、ジン、ウイスキー、ウォッカなど):
distilled liquor, sprits・・・醸造酒を蒸溜してつくるお酒

・浄酎:
Jo-Chu, Purified Spirit・・・この記事で学びましたね!!

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