外国人に教えたい!日本のお酒シリーズ第六弾~ジャパニーズウイスキー編~

ジャパニーズウィスキー 通訳ガイドブログ

30年以上に渡り、国内外のあらゆるお酒に関わる仕事をしてきたJWG現役通訳ガイド・岸原さんをゲストライターにお迎えし、外国人に教えてあげたい、日本の様々なお酒のいろはをお届けするシリーズです。

【ガイドライター】

岸原文顕(きしはら ふみあき)
ソムリエ(日本ソムリエ協会)、H.B.Aカクテルアドバイザー、全国通訳案内士
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30年以上にわたり、国内外の様々な酒類のマーケティングや商品開発に従事。世界3大ビールブランドや洋酒類のブランドマネージャーを歴任。

居住したカナダ、香港、上海を拠点にして世界各地の飲食文化に触れ、2017年から京都に居住し、日本各地や世界に向けてクラフトビールの魅力を発信しつつ、未来型のビール文化の創造に取り組む。

現在は、グローバルマーケティング・リサーチの仕事を通じてNIPPONの素晴らしいブランドの海外展開に挑戦中。

日本の「蒸留酒」について、前回は焼酎・泡盛を紹介しました。今回は、世界で人気沸騰中の「ジャパニーズウイスキー」についてです。


その他のシリーズはこちらから。

「ジャパニーズウイスキー」とは

ジャパニーズウィスキーのはじまり

ウイスキーは、穀物を原料にして木樽で熟成させた蒸留酒。世界中で愛飲されていますが、もともとはケルト系の人々の地酒で、誕生地はアイルランド説とスコットランド説とがあります。

17・18世紀スコットランドでの話、密造者たちは酒税の過酷な徴収を逃れるために蒸留酒を木樽に入れて隠していましたが、数年後その樽を開けてびっくり。無色透明だった液体は魅惑的な琥珀色に、芳醇でまろやかな香味の全く新しい酒に生まれ変わったのです。

ちなみに、アイルランドではWhiskey、スコットランドではWhisky、と綴ります。

ケルト系の人々が母国や移民先で造り始めたスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと並び、ジャパニーズウイスキーは世界の5大ウイスキーのひとつと称されています。ケルト系民族とは無関係の極東の国・日本で、一体誰がいつウイスキー造りを始めたのでしょうか?

そのパイオニアは、スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝と、彼を蒸留技師として起用した事業家の鳥井信次郎です。2人の夢が、京都至近の山崎で日本初の本格蒸留所として結実した1923年が「ジャパニーズウイスキー元年」です。2014年の連続TVドラマ「マッサン」でも話題になりましたね。

ジャパニーズウィスキーの定義

近年、世界的なウイスキー品評会でジャパニーズウイスキーが数々のメダルを受賞。
世界の注目を浴びるとともに輸出も激増し、中には“Fake Japanese Whisky”と揶揄されるものも出てきました。そのため、本年4月1日からはジャパニーズウイスキーと呼ばれるためには、

①原材料は麦芽を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること
②国内の蒸留所で蒸留すること
③原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること
④日本国内で瓶詰めすること

が、要件となりました。(日本洋酒酒造組合 参照)

ジャパニーズウイスキー独自の価値

富士山
日本の気候風土が磨くウイスキ

ではなぜこのようにジャパニーズウイスキーが世界で評価されるようになったのでしょうか?

独特の気候風土

ウイスキーの風味は、風土と気候に大きな影響を受けます。日本の代表的な蒸留所は、清らかで豊富な水に恵まれ、澄んだ空気に包まれてほどよく湿潤な選び抜かれた場所にあります。

四季がはっきりしているため、木樽が寒暖差で膨張・伸縮することで熟成が深くなります。醸造所の貯蔵庫に入ると香しく神秘的な空気に包まれて、木樽が呼吸していることが分かります!

造り手の探究心

さらに、日本の造り手は、全ての工程で僅かな変化に対して五感を研ぎ澄まします。

原酒を樽に詰めた後も決して放置しません。まるで子育てをするように、10年、20年、30年という長い年月に渡って見守り続けます。

そして、ブレンダーは一つ一つの異なる樽の中で熟成のピークを迎えた原酒を選りすぐり、限りない組み合わせの中で最高のハーモニーを奏でるブレンドを探求します。まさに、オーケストラの名指揮者と比喩される由縁です。

蒸留所の多様性

パイオニア的蒸留所は、王道のスコッチタイプのウイスキーを日本人特有の繊細な感性と丁寧さで本場以上のバランスの良さと深みを実現しつつ、その個性を発揮しています。

違いが際立つウイスキー造りだけでなく、地元の農家と大麦を育てて麦芽にしたり、はたまた自前で木樽もつくるなど、「なんでもやってやろう!」という、ベンチャー精神溢れる蒸留所もあります。

一方で、伝統的なスコッチタイプではなく、日本人の食生活や食の伝統に根ざす嗜好に合う独自のウイスキー造りを目指す蒸留所もあります。

そこでは、様々な蒸留設備でモルト原酒に加え、アメリカンやカナディアンタイプの原酒も造り、絶妙なブレンドをすることで理想の実現に挑戦しています。

さらに、日本の造り手たちは蒸留所を互いに訪問しては、敬意をもって交流して互いを高めあっています。素晴らしいことではありませんか!

楽しみ方はいろいろ

ハイボールとして

一時はピークの5分の1まで縮小した日本のウイスキー市場がV字回復を遂げています。

その立役者が「ハイボール」。おじさんが飲む古臭い、価格も敷居も高い、強くて飲みにくいお酒というそれまでのウイスキーのイメージを一新させました。ソーダで割ることで度数を下げ飲みやすく、ライト志向で食事にも合い、しかも酎ハイやビールと同じくリーズナブルな価格も相まって、若い世代を掴み一気に広がったのです。

このハイボールという飲み方を知らない海外のゲストがいたら、食事と合わせてみて!と奨めましょう。食中酒としてウイスキーを楽しむことは、日本人の発明と言っても過言ではありません。

和食と一緒に飲むハイボールはおすすめ!

水割りやロックで

さらに、同じ1本のウイスキーでもいろいろな楽しみ方があります。

まずはストレート(ニート)で香りを嗅いで一口、そして1:1くらいまで水を加えると隠れた香りが出てきます。ジャパニーズウイスキーは、割っても香りが飛ばず、腰が折れないのが特長です。もちろん、大ぶりの氷を入れたオンザロックは見た目も綺麗で美味いですね。

飲み方ひとつで味わいがどんどん変わる面白さ、ぜひ海外のウイスキー好きをうならせましょう!

ウィスキー

一本で、楽しみ方いろいろ!

おわりに

日本のウイスキー造りは、来年2022年に記念すべき100周年を迎えます。
世界が賞賛するブレンダーの友人に、「造りたい究極のウイスキーは?」と訊いてみました。

その答えは、「魂を揺さぶるウイスキー!」とのこと。 
感動で魂が震える、そんなウイスキーをぜひじっくりと味わってみたいものですね。

日本の蒸留酒、次回は近ごろ何かと話題のJapanese Gin編です。お楽しみに!

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