全国通訳案内士インタビュー Vol.7 アーウィン香織さん

インタビュー

この記事は、第一線でご活躍されている通訳ガイドの方をインタビューし、コロナ以前/コロナ禍での自己研鑽の方法や、今後の目指す姿などをお伺いします。

第7回目となる今回は、外国人目線を熟知したエクセレントガイド・アーウィン香織さんにお話をお伺いします。ガイド業に対する向き合い方や、上質な観光体験を提供するための自己研鑽の方法についてお伺いしました。

全7回のインタビューはコチラから。

ガイド紹介

アーウィン香織
2015年に全国通訳案内士試験(英語)に合格。コロナ禍以前はガイドとして年間100日程度稼働。東北を拠点として、スルーツアーを中心に富裕層ゲストをご案内。観光庁の「上質なインバウンド観光サービスを提供するガイド育成事業」の研修に参加。

ガイドになるきっかけ

ーー ガイド歴を教えてください

資格を取得したのは2015年です。
取得後1〜2年間は主に、地元(山形県)にて催されるFAMトリップへの同行を請け負っていました。当時は英会話教室を開いており、本格的にガイド業へと注力したのは2017年ごろからでしょうか。

2018年から2019年にかけては、クルーズツアーやスルーツアーのガイドを行なっていました。コロナ禍による休眠期間を経て、今にいたります。

ーー ガイドを志したきっかけは

英語を教えていたこともあり、語学資格の一環として取得しました。
試験会場を訪れた際、受験人数の多さに驚いた記憶があります。

その後新人研修を受講してみて、向いているのではないか、と感じたのが始まりです。
元々通訳の仕事もしていたので、その影響があったのかもしれません。

ーー そこから活動を始めた

ローカル含む団体への加入や、研修を通してガイド同士の繋がりを築いていきました。

またその折、請け負っていた通訳の仕事の縁で、クルーズガイドとして道筋をつけることができました。クルーズツアーのガイドにあたり、大手旅行会社へ登録が必要だったのですが、すぐに採用されたのはタイミングが良かったのだと思います。

実績を積むにつれて、その他のツアーやFAMトリップのお話をいただくようになりました。
一つ一つの積み重ね、ですね。

仕事の獲得について

ーー ガイドの仕事を最初はどう探したのですか

やはりガイドになった当初は、想定していた通り、仕事は多くありませんでした。
ガイド団体経由の募集も東京や京都の案件が主ですしね。

友人ガイドから、アメリカの大手ツアー会社への応募を誘われて申し込んでみました。全国からのガイドを受け付けていたのはありがたかったです。

そして合格後、スルーガイドとして仕事を請けるようになりました。

その他では、こちらもガイド仲間の繋がりで、ウォーキングツアーの会社も紹介してもらい、お仕事をいただくようになりました。FAMトリップ内でご一緒したトラベルデザイナーの方や、エージェントから案件をご紹介いただく機会も増えました。

HP経由や、口コミからご依頼いただくこともありますね。

ーー ガイドとして、営業力は課題に挙げられることもあります。改めて思いますが、紹介を通じて広がっていくんですね。

そう思います。私自身、他の方を紹介する場面も多いので。

ガイド同士、面接の際のプレゼンの仕方はもちろん、振る舞いなどをみて「この人は紹介できるか」を考える機会は多いのではないでしょうか。

ネットワークはとても大切だと考えています。

ーー スルーツアーのゲスト層 

極端に裕福というよりも、時間とお金に余裕のある層、といった印象を持っています。

2019年のラグビーワールドカップの前後は例外的でしたが。
決勝戦に合わせての来日であったり、超富裕層と呼ばれる方々が多くいらっしゃっていました。彼らはアドベンチャーツアーをより好んでいた印象があります。

ガイドに求められるスキル

ーー 身につけておきたいスキル、で何か思いつきますか

その場の雰囲気に相応しい振る舞いだったり、察して空気を読む能力でしょうか。
準備の入念さや相手を思う心、先を読む力なども求められるかなと。

私の場合は、若い頃に習っていた茶道の経験が活きているのだと思います。

それに、性格的なものですが「人を喜ばせるのが好き」な人だと好ましいですね。

また、日頃から異文化に触れている、もしくはそういった過去がある方は有利だと伺ったことがあります。国際結婚や外国で暮らした経験などでしょうか。

文化やお国柄に苦労して順応した経験が、細やかな配慮へと結びつくのだと思います。

自己研鑽の方法

ーー  ガイド業における自己研鑽として、何か取り組まれたことはありますか 

時間の許す限り、研修などがあればなるべく参加しています。
震災後という時期もあって、東北地方では復興庁が関わるものが数多く行われていたので。

また、FAMトリップで繋がった方を介して、東北で行われる研修のお手伝いをしていたこともあります。その中でも、3年ほど東北で実施された地球の歩き方のガイドスキルアップ研修は非常に学びになりました。知り合ったガイド同士で研修を行うようになったり、お互いに研鑽を積むことができたと思います。

アメリカのツアー会社は社内のトレーニングが充実していたので、そちらにも参加していました。

後は失敗を繰り返す中で、成長できたのかなと。

ーー地球の歩き方のガイドスキルアップ研修で良かった点とは

やはり、外国人目線を学べたことでしょうか。

ガイドに期待する点において、日本人的な「知識を得る」ような目的とは、全く異なりました。工夫すべきは説明の仕方等ですね。

当初はピンとこない部分があったものの、実践を通して腑に落ちました。

ーー ある程度経験を積まれた今、初期の頃と比べて何か変わりましたか

例えばスルーツアーの場合、バスガイド的な役割を担う場面も多いので、知識や場所を覚えるようにより意識しています。

フリータイムが長く取られるツアーであれば、その時間にどうご案内するか、引き出しを多く用意するようにしています。体力づくりも不可欠です。

楽しい雰囲気づくりやチームビルディングも大切にしています。

また、社会情勢や政治など、常にアンテナを張るようにしていますね。
ファシリテーターや通訳としての役目を求められる場面に備えて、自分自身の知識を深めておく必要があるので。

ーー 多岐にわたって目を向けるようになったと

最初の頃は歴史であったり、知識面にフォーカスしていました。
ですが実際のところ、ゲストが知りたいのは日本の現状とか、日本人として「どのように考えているか」だったりするんですね。

昔のことをお話するにしても、「今とどう繋がるか」を併せてご説明するようになりました。また、自分の考えをしっかりと表明できるよう、普段から思考しておく必要があると思っています。

「見聞きしたことのある物事など、点と点が繋がるような体験」って嬉しいですよね。
その体験を創出できるよう、常に様々な情報を仕入れておければなと。
何がきっかけとなるか分からないし、ガイド同士でも情報があればシェアしています。

富裕層を対応した事例

ーー 富裕層ゲストの対応をされていて、印象に残った出来事や失敗などはありますか

グリーン車の手配をしたところ、実際はグランクラスをご所望だったことがありました。
選択肢として考慮できていなかったので、反省しましたね。

ウォーキングツアーの会社の場合だとリピーターが多く、期待に答えられるように行程が練られているため、大きな失敗は避けてこれたのかなと思います。

無理難題とは異なるものの、「売っていないものを買いたい」と言われる場面はあります。
以前、シーズン外のタイミングで、干し柿をお土産に買いたいと頼まれたことがありました。
もちろん販売されておらず、旅館の女将さんがご近所に電話をかけて、自家製のものを届けていただきました。東北の皆さんの優しさに救われた経験です。
なんて素晴らしい人たちなんだ、とゲストはとても感動していましたね。

今後の活動

ーー 今後の展望について聞かせてください

東北を主軸として、ラグジュアリー系のツアーをガイドしたいと考えています。

自宅で過ごす時間も大切にしていきたいので、ロング案件の対応は控えめにするかもしれません。コロナ禍を経て考え方が変わった点ですね。

研修などで生まれた繋がりも、上手に活用していければと思っています。

ーー 文化体験やトレッキングなど様々な分野がありますが、何か検討されていますか

体力が続く限り、分野を問わず挑戦してみたいです。
例えばハイキングなどでも、一部に文化体験が含まれている場合が多いです。
私自身その形が好きなので、やってみたいなと思います。

ただ、登山のような本格的アドベンチャーは、アクティビティガイドの方にお任せできればなと。ゲストのレベルに併せて、スルーツアーの範疇でご案内できればと思います。

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