【通訳案内士のためのケーススタディ】飲食店に入ってわかったゲストの嗜好

通訳ガイドスキルアップ

街人道ケーススタディ、第3弾をお届けします。
第一弾、第二弾はこちら

ケース#003:飲食店に入ってわかったゲストの嗜好

あなたは4名組のプライベートツアーのガイドをしています。
ゲストのリーダーから、昼はお寿司屋さんがいいということで、事前にお寿司屋さんを予約していました。

ツアー当日、朝に何かアレルギーとかあるかと聞いた際は何もないとのことだったので、予定通りお寿司屋さんに到着しました。
「さぁ何にする?」写真付きのメニューをゲストに渡したところ、それまでおとなしくしていた1人が口を開きました。

「私、お寿司食べられないの・・・」

さて、あなたならどうしますか?

いやいや、ケースの設定がおかしいんじゃない?
朝に聞いたのに、そんなことないでしょ?

そう思うのが自然だとは思うのですが、真実は小説より奇なり。

実際、いざ食べ物と向き合うと食べられないっていう人って結構多いんです。

さて、どうしますか?

 

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(対応例と解説)ケース#003:飲食店に入ってわかったゲストの嗜好

(対応例①)

「え、お寿司食べられないの?」困ったな。。。
・・・
「いや、いいよ、気にしないで。よくあることだから。
お茶飲んで、後でコンビニで適当に何か買ってお腹満たすから。」そうゲストはいいます。
そう?じゃあそれで行こうかしら…
店員さんを呼んで「すみません、この方生魚がダメなようで、注文しなくて大丈夫ですか?」
お店の了解もとれたので、その方にはお茶を飲んでいただきながらランチを楽しむことにしました。

(対応例②)

なんで、朝に言ってくれなかったんだろう。
少し困惑しながら、出来ることを考えます。プロとして何とかしなくては。
「お寿司が食べられないっていうのは、魚が全く食べられないの?」
ゲストに聞いたところ「火を通せば大丈夫なんだけど生魚はトラウマなんだ…」とのこと。
なるほど、では、と思い、お店の人に、すべて炙ってもらえないか聞いてみたところ、
炙るのは難しいけど、穴子やかっぱ巻き等で何とか1セット用意してくれることになりました。
無事、皆でランチを一緒に楽しむことができました。
「こんなおいしい穴子初めて食べたよ。日本に来て一番だ!」魚嫌いな彼が喜んでいて嬉しくなりました。

(対応例③)

朝に聞いたのに…
今更お店を変えるわけにはいかないか、いや、でも…近くに行きつけの天ぷら屋さんもある。
そっちに変えるか…うーん…。
「じゃあ3人はここでお寿司を食べて!あなたは天ぷらでもいい?私が近くの別のお店に連れて行ってあげる。」
お寿司屋さんは5名で予約していましたが、事情を説明し、2名キャンセルし、
魚を食べられない彼と一緒に天ぷら屋に行き、2組分かれてランチをすることにしました。
天ぷらがなかなか来なくて焦りましたが、食べ終わってお寿司屋さんでランチを終えてくつろぐ3人と合流しました。

(解説)

さて、いかがでしたでしょうか。
こんなありえないようなことも実際には起こりえます。

今回のケースは3つのポイントがあります。

  1. ゲストの真意を把握する
  2. 困った時の代替案は自分で用意しておく
  3. なるべくみんなで一緒に楽しめる道を考える

1.ゲストの真意を把握する

ゲストの言っている話は、必ずしもゲストの思っている真意を表していないことがあります。
ゲストが話す内容は、ゲストのニーズの氷山の一角です。その前提に立ち、ゲストの真意を掴みましょう。

対応例②のように、「お寿司を食べられない」って聞いてたとして、
ゲストは「寿司=生魚」と勝手な先入観を元に「お寿司を食べられない」って言っている場合もあります。

聞いてみると、食べられないのは生魚であって、
それ以外の「寿司」であれば食べられるというようなケースは多々あります。

このように、ガイドをするうえでは、ゲストのニーズを自分から引き出していく必要があります。

中には、ゲストが意識もしていないニーズというのもあるかもしれません。

例えば、「お寿司を食べたい」と言っていたゲストも、
「美味しい新鮮な魚を食べたい」と思っており、「美味しい魚=お寿司」と考え寿司屋をオーダーしたが、
実際には、目の前で新鮮な魚をさばいてくれる、小料理屋の方が、真のニーズに合致しているというようなケースです。

このように、自らゲストのニーズを引き出していき、それに応えていくことができるようになると、
ゲストに満足を、いや、それ以上の感動を提供できるようになっていきます。

2.困った時の代替案は自分で用意しておく

そんなゲストのニーズを引き出していくためにも、自分の中で引き出しを多く持っておきましょう。

通訳案内士としてガイドをしていると想定外の事態は多々あって面食らう事態は多々あるのですが、
落ち着いて対応することが大事です。

「どうすればいい?どうすればいい?」と、周りのゲスト、お店の人に聞くのも一つです。
でもその時に、自分なりの代替案を持っていると強いです。

対応例②のように、ゲストの真意が分かった後でも、
「すみません、生もの無理なんですけど何とかなりますか?」とお店の人に聞くと、
「いやー、もうかっぱ巻き、納豆巻き、穴子とかしか無理だよ」と言われるケースがあります。

でも、「炙って食べてもらったらいいのでは」という代替案を持っていると、
「うーん、普段やってないけどやってみようかな」と何とかしてくれる店もあります。
そもそも、代替案を持っているからこそ引き出せるニーズもあります。

実際、生魚が食べられないゲストに、炙った寿司を提案し、提供したところ大好評でした。

こうすれば行けるのでは、という代替案を持っていると道が開けることがあります。

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(P.S.)
面食らう事態に弱い方は、是非名著「道はひらける」を読んでください。

面を食らったところで、死ぬわけじゃありません。落ち着いていきましょう。

3.なるべくみんなで一緒に楽しめる道を考える

そして、もう一つ大事なのが、せっかくの日本旅行なので、
皆で一緒に楽しめる道を考えようということです。

対応例③のような対応も悪くありません。
対応例①のように食事制限の多いゲストが遠慮することもよくあります。

でも、やっぱりみんな一緒に楽しみたいですよね。

間に合えば(かつ、お店に迷惑をかけないのであれば)、お店を変えるのも一つかもしれません。
寿司屋だったら、持ち帰りが出来るお店もあるので、持ち帰りにして、
もう一人分は別の場所で調達して、公園でピクニックにするのも一つです。

もうどうしようもないな、と思う場合でも、
どこかに道は絶対あります。

何かあった際にも道を開けるよう、日ごろから引き出しを増やしていきましょう。

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